サッカー日本代表にも参考になるブライトンの布陣変更失敗 三笘薫は多彩なプレーで存在感 (3ページ目)
【同点に追いつかれた原因は?】
2-0で残り時間は5分+アディショナルタイム。ブライトンの勝利は動かぬモノに見えた。だが試合の流れは最終盤に一変する。ブライトンはウルヴズに同点とされてしまったのだ。
原因は後半35分、ブライトンのファビアン・ハーツラー監督が布陣を5バックに変更したことと深い関係がある。
守備固めに出たにもかかわらず同点に追いつかれた。典型的な采配ミスで、ブライトンは土壇場で勝ち点3が目の前から消えていった。
もっとも、三笘のポジションは同じ5バックでも森保式(3-4-2-1)とは違っていた。5-4-1(5-2-3)の左ウイング。ウイングバックではないところがポイントで、攻撃度で勝るのはハーツラー式3バックだ。とはいえ、それまでの4-2-3-1より数段、守備的である。前節のニューカッスル戦でも残り数分、ハーツラー監督は5バックに切り替えている。この時は無事に逃げきったが、2節連続とはいかなかった。
守りを固めたにもかかわらず2点を奪われた。ロベルト・デ・ゼルビ前監督時代にはなかったことが起きてしまった。サッカーでは思いのほか多く発生する"あるある"とはいえ、チームとしてショックは大きいハズだ。監督のカリスマ性が急降下しかねない事件である。
三笘の話に戻れば、前半の採点を10点満点で7点とするならば後半は6。トータルでは6.5だ。ドリブルでセメドを縦にかわし、マイナスの折り返しを決める"ザ・ミトマ"というプレーは、前後半を通じて披露されなかった。そうした意味では物足りなさを覚えるが、存在感は十分発揮した。エストゥピニャンとのコンビプレー、シュートシーンに絡む動きなど、多彩にプレーできた。幅は広がっていると見る。
いずれにせよ、攻撃的サッカーと守備的サッカーの特徴が交互に現れた、まさしく学習になるブライトン対ウルヴズの一戦だったと言える。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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