三笘薫を見ていると思い出す 飄々と、淡々と客席を熱狂させた往年の名アタッカーベスト10 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【バランサーとしての能力にも長けていたラウル】

第7位/ヌワンコ・カヌ(ナイジェリア代表)

 アヤックスで頭角を表し、インテル、アーセナルでプレーしたポストプレーヤータイプのセンターフォワード。両手をだらりと下げた脱力感のあるフォームで、身体をくねらせながらプレーする軟体動物さながらの動き。そして197センチという長身のルックスから受ける印象は、とても三笘に似ているとは言えない。しかし淡々とプレーするところ、反則はされても、反則をやり返そうとしないフェアな態度、「俺が、俺が」とゴール前で我を張らないところに共通の気質を垣間見ることができる。

第6位/ラウル・ゴンサレス(スペイン代表)

 レアル・マドリードの銀河系軍団時代を支えた多機能型選手。4-2-3-1なら3の左しかできない三笘に対し、ラウルはどこでもできる。そうした意味で両者のタイプはまるで異なるが、与えられた任務を忠実にこなすという点において一致する。

 ロナウド、ルイス・フィーゴ、ジネディーヌ・ジダン、デビッド・ベッカムなど、ラウルの周りはともすると奔放な動きをしがちなスター選手ばかりだった。ラウルにはポジションを的確にカバーする役割が求められていた。バランサーとしての能力にも長けていたのだ。その日、その日で異なるタスクを黙々とこなす真面目さ。忠実さ、賢さを備えた頭脳的アタッカーという点で三笘と共通するのだ。

第5位/ルク・ニリス(ベルギー代表)

 ベルギー代表の歴代選手のなかで、最も攻撃能力が高かった選手ではないか。なによりプレーが格好よかった。超クール。無表情で淡々と獲物を狙う姿には怖ささえ感じた。空中戦にも強く、ハゲタカのような猛禽類的な魅力もあった。しかも左右両利き。左しかできない三笘よりポジションの適性範囲が広く、右、左、真ん中でもプレーした。

 ハイライトはPSV時代の1994-95シーズン。ロナウドと組む2トップは最強だった。その後、ケガに見舞われキャリアを棒に振った悲劇の名手。日本では知る人ぞ知る選手にとどまっていることも、そそられる理由だ。

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