三笘薫を見ていると思い出す 飄々と、淡々と客席を熱狂させた往年の名アタッカーベスト10 (4ページ目)
第2位/デニス・ベルカンプ(オランダ代表)
4-2-3-1の1トップ下をやらせたら誰が一番かと言われた時、真っ先に出てくるのがこの名前だ。1トップ下にはFW的な選手もいれば、MF的な選手もいる。選択肢は多いが、FW的な1トップ下に限れば、断然ベルカンプになる。正確な技術。とりわけトラップとターンが秀逸なポストプレーヤー的な1トップ下で、冷静、そしてクールなのだ。顔に表情を出さないポーカーフェイス。何を考えているかわからない宇宙人的な魅力もあった。自分の世界を持った選手という意味で三笘と似ている。
温厚な人格者としても知られたフアン・カルロス・バレロン(スペイン代表) photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAこの記事に関連する写真を見る第1位/フアン・カルロス・バレロン(スペイン代表)
やはり4-2-3-1の1トップ下の選手だ。ただしFW的なベルカンプに比べるとMF的。4-2-3-1の興隆に貢献した監督と言えばヒディンクが1番手だが、2番目にくるのはハビエル・イルレタだろう。デポルティーボ・ラ・コルーニャの黄金時代を築いた監督だが、バレロンはそこで1トップ下を務めていた。イルレタの4-2-3-1は彼の技巧的なプレーなしには成立しなかった。
"デポルのジダン"の異名を取ったバレロンだが、繊細さにおいてはジダンより上だったというのが筆者の見方だ。当時、ジダンは文字通りのスターだった。私服に着替えれば映画スターのようだった。だがバレロンは違った。近所にいそうな普通のお兄さんだった。インタビューしたことがあるが、よくも悪くもスター性ゼロ。無口だけれどいつも笑っている、いかにも人のよさそうな典型的な優男だった。三笘も優男系だろう。ミックスゾーンでインタビューを受けている姿にスター性を感じない。特別すごい選手には見えない。いい意味で普通なのだ。
バレロンはジダンと比較されるほど圧倒的に巧かったが、スペイン代表では不動の1トップ下だったわけではない。そこにはラウルがいた。レアル・マドリードの顔である。"デポルのジダン"とは格、スター性が違った。さらに1列低い位置にはジョゼップ・グアルディオラがいた。シャビ・アロンソもいた。そういう意味では実際の技量と知名度との間に最もギャップを抱えた通好みの選手だった。タイムスリップして「誰を一番もう一度見たいか」と言われれば、筆者はバレロンと答える。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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