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18歳エンドリッキがレアル・マドリードで日々進化 歴代ブラジルFWにはない魅力とは? (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【短いプレー時間でも必ずシュートを打っている】

 パルメイラスの育成チームにスカウトされ、15歳でU-21のコパ・サンパウロに出場。294分間のプレーで6ゴールをゲット、大会MVPに選出されている。ペナルティーエリア外から決めたオーバーヘッドシュートは大会のベストゴールにもなった。

 これが2022年の1月。5月にはパルメイラスとプロ契約、10月にデビュー、さらにクラブ最年少得点も記録。12月にはレアル・マドリードへの加入が内定。規約上、本契約を18歳まで待って現在に至っている。まさにシンデレラストーリーだ。

 ただ、ここで大きな壁に阻まれることになる。エムバペの加入だ。

 かつての神童も25歳。ワールドカップ2大会に出場して優勝、準優勝。脂の乗った世界最高のストライカーとポジションを争わなければならない。ブラジル代表のヴィニシウス、ロドリゴもいてFWに空席はない。

 エンドリッキはラ・リーガ第7節(9月24日時点)までに開幕戦を除く6試合に交代出場している。しかし、プレー時間は極めて短く、最長で第7節アラベス戦の21分間。最短はレアル・ソシエダ戦の0分で1分に満たない。他は5分、4分、1分、7分。平均すると約6分間である。

 面白いのは、短いプレー時間にもかかわらず必ずシュートを打っていること(レアル・ソシエダ戦を除く)。初出場の第2節バリャドリード戦は5分間にシュート1本で1ゴール。その後は得点こそないが、1分しか出ていないベティス戦でもシュートは打っているのだ。

 昔の話になるが、ブラジルでは入団テストで10分間程度しかプレーさせてもらえないのが普通だったとか。そのごく短い時間に何らかの爪痕を残さなければ交代させられる。現在は変わっているかもしれないが、競争の厳しさは同じようなものだろう。そのブラジルサッカーという厳しい環境のなかで生き残るには、野獣にならざるをえない。

 エムバペ、ヴィニシウス、ロドリゴの強大なライバルとの競争において、爪痕を残すべく必死なのではないか。シュツットガルト戦の強心臓ゴールも、本人が決められるチャンスがあると思ったのなら譲る理由などありはしない。外して非難されるよりも、決めて生き残ることしか頭になかったのではないだろうか。

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