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マンチェスター・シティのリコ・ルイス19歳 日々進化するSBの最先端を行くプレーとは (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【リコ・ルイスは「偽SB」界の最先端】

 1980年代に2トップのシステムが全盛となると、SBはフィールドから消えたウイングの役割を引き継ぐようになった。上下動とクロスボールがSBにとってマストになる。

「偽SB」の登場は21世紀に入ってから。ジョゼップ・グアルディオラ監督がSBを中央へ移動させる。そこには戦術的な必然性があった。

 グアルディオラ監督は一貫して両サイドにウイングを置く。バルセロナではリオネル・メッシ、ティエリ・アンリなど。バイエルンではフランク・リベリーとアリエン・ロッベンなど、強力なウイングプレーヤーを配している。彼らにパスを供給するためには、SBを内側へ寄せてチームのボール保持力を高めるとともに、サイドへのパス経路を開ける目的があった。

 ダニエウ・アウベス(バルセロナで活躍)、フィリップ・ラーム(バイエルンで活躍)ダビド・アラバ(バイエルン→レアル・マドリード)といった、ブライトナーやジュニオールに通ずるMFとしての資質を持つSBがいたのも大きいが、攻撃の機能としての「偽SB」である。

 マンチェスター・シティで「偽SB」を務めるリコ・ルイスは17歳でデビューしたアカデミーの逸材だ。まだ19歳、しかし今や風格さえ漂う。シティで最もマルチな才能を持つ選手とも言われている。

 父親は元プロボクサー、2度のムエタイ王者。その血を受け継いだせいか、リコ・ルイスは敏捷性とバランス感覚に優れ、精密なボールタッチ、的確な状況判断、無尽蔵のスタミナをみせる。

 シティの同じポジションには、イングランド代表で世界有数の守備者であるカイル・ウォーカーがいるが、「偽SB」としてはリコ・ルイスのほうが上手である。ウォーカーが出場する時はセンターバック(CB)のひとりが「偽CB」となり、ウォーカーは後方にとどまるので偽度は低い。一方、リコ・ルイスは高い位置をとり、残りの3人のDFが後方に残る。

 オレクサンドル・ジンチェンコ(アーセナル)がいた頃は、左右で「偽SB」の時もあったが、最近はリコ・ルイスの右だけが「偽」になっている。右サイドの幅をとり、さらに中央へ移動する。ライン間でパスを受けて捌くプレーは、フィル・フォーデンやケビン・デ・ブライネにも劣らない。まさに万能型のSBであり、「偽SB」の最先端をゆく才能を示している。

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