パリオリンピック男子サッカー金メダルのスペインが指し示す、日本サッカーの進むべき道 (3ページ目)
【日本は何が劣っていたのか】
それを突き詰めてきたスペインは、今や全盛を迎えている。フル代表は2023年のネーションズリーグ、2024年のユーロで優勝。「セルヒオ・ブスケツの後継者は出てこない」と言われたが、ロドリは現在、世界最高のプレーメーカーである。直近のU-21欧州選手権、U-19欧州選手権もともに優勝。そしてパリ五輪でフランスを叩き潰しての金メダルだ。日本が学ぶべきはどのサッカーかは、言うまでもない。
ゆめゆめ、パリ五輪で日本が「スペインを苦しめ、その域に達していた」などと考えないほうがいい。細谷真大のゴールがオフサイドではなかったら......と言うが、やはりオフサイドだった。百歩譲って得点になったとしても、後半はまるで歯が立たなかった。90分間を戦うサッカーでは、紙一重が大きな差になるが、ボールを握り、つなぎ、運ぶ、の点で明らかに劣っていた。
その事実を正面から受け止めない限り、「いつかは勝てる」となって、たとえ勝っても、そんな神風は何度も吹かないだろう。
「ボールを持っている時間を長くする」
カタールW杯後、森保一監督はそう言って、「ベスト8」に向けた意気込みを語っていた。あの大会で、ドイツ、スペインを立て続けに撃破したことが、どれほど神がかった結果だったか、関係者なら全員、知っている。逆に言えば、それが再び起こる確率は低い。必然で勝てるような構造に作り直さなければ、一敗地にまみれることになる。
スペインの五輪金メダルはその教訓を与えている。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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