ユーロ2024制したスペインの象徴 ラミン・ヤマルを生んだ「クライフの遺志」とは (3ページ目)
間接的な話を含めれば、クライフの遺志の広がりの価値は計り知れない。
マンチェスター・シティのグアルディオラ監督、アーセナルのミケル・アルテタ監督はラ・マシア出身であり、クライフの教えが体に刻まれている。プレミアリーグで指揮を執るふたりが信奉する攻撃的なサッカーにはクライフの匂いがするが、それは気のせいではない。
今回のユーロでも、マンチェスター・シティやアーセナルで指導を受けた選手が躍動した。
イングランドのフィル・フォーデン、カイル・ウォーカー、ブカヨ・サカ、スペインのロドリ、ポルトガルのベルナルド・シウバ、ドイツのカイ・ハヴァーツ、イタリアのジョルジーニョ、ベルギーのケヴィン・デ・ブライネ、スイスのマヌエル・アカンジ、フランスのウィリアン・サリバ、クロアチアのヨシュコ・グヴァルディオルなど、枚挙にいとまがない。
退屈な戦術論やフィジカル信仰が横行し、つまらなくなりかけている現代サッカーで、クライフは不滅の英雄だ。クライフがいなかったら、サッカー界はどうなっていたのか? ヤマルという英傑は生まれず、スペインのスペクタクルも完成しなかったかもしれない。
「美しく勝利せよ!」
偉大なる遺訓である。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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