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ユーロ2024 ドイツの敗因はジャッジだけではない スペインに劣っていた「幅」の使い方 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【両チームの違いを象徴した決勝点のシーン】

 左からダニ・オルモが、中央で構えるミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)に右足で柔らかいボールを入れ込んだのは、延長後半13分50秒だった。

 右のライン際で、ヤマルに代わって投入されたフェラン・トーレス(バルセロナ)が、ドリブルを引っかけられたプレーが起点になった。これを拾った右SBダニエル・カルバハル(レアル・マドリード)は、すかさず内寄りに構えていた逆サイドの左SBマルク・ククレジャ(チェルシー)に、サイドチェンジ気味にパスを展開。ダニ・オルモはそのククレジャからのパスを左ウイングの位置で受けたのだった。

 トーレスのボールロストからダニ・オルモのアシストまで約8秒。ボールはその間にピッチの右から左に大きく展開されていた。ドイツには絶対に望めないプレーとはこのことである。ドイツの守備陣は左から右に視線を大きく振られることになった。その結果、ダニ・オルモのボールをメリーノはフリーで受けることができた。高々としたジャンプから上体をグイと捻ると、ボールはドイツゴールに静かに吸い込まれていった。このまさに劇的な一撃は、ドイツとスペインの違いを象徴するプレーでもあった。

 逆サイドを見るカルバハルのしたたかな目。それを受けたククレジャは、左の大外で構えるダニ・オルモにパスを出すと、パス&ゴーで前進、ダニ・オルモと対峙していたキミッヒの目を幻惑させた。ダニ・オルモとの間隔は、優に3~4メートル空いていた。また、このスペインの左サイド対ドイツの右サイドの攻防に、ドイツの右ウイングは参加していない。サイドで数的優位を作られたことが決勝ゴールに繋がった。

 ククレジャは延長後半開始早々、エリア内でハンドを犯している。引いた手に当たったという感じだったが、アンソニー・テーラー主審とVAR室は、これを反則に取らなかった。ドイツにとっては痛いジャッジになった。しかし、そのワンプレー前でトーマス・ミュラー(バイエルン)のパスを受けたフィルクルクの動きが、オフサイドだった可能性も否定できない。どうジャッジした結果、流したのか。運のあるなしで片付けるには重要すぎる判定だった。

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