久保建英の今季の激闘を振り返る 「ピリッとくる辛さ」で最終節も現地紙は高評価 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【大きかったアジアカップの影響】

 去年の秋、アルベルト・ゴリスは柔らかな声で、ラ・レアルで輝きを放つ久保についての印象を語っていた。1980年代にラ・リーガ連覇を成し遂げた伝説的センターバックだけに、説得力があった。

 久保がシーズンを通じて選手として成長したことは間違いない。何よりチャンピオンズリーグ(CL)でインテル、ベンフィカというイタリア、ポルトガルの王者を上回ってベスト16に進出する立役者になった点は歴史的と言える。ラ・リーガでも序盤は月間MVPを受賞するなど、ジュード・ベリンガム(レアル・マドリード)、アントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ)などに比肩する輝きだった。

 惜しむらくは、今年1月、アジアカップに招集されてしまったことか。

 筆者はずっと指摘してきたことだが、シーズン途中に大陸別の大会に参加するなど言語道断だった。それもラ・リーガ、CL、スペイン国王杯が重なる日程でのことだった。案の定、後半戦の久保はわずか1得点に終わった。筋肉系の小さな故障を抱え、全力でプレーを続けることができていない。

 久保離脱後、ラ・レアルはラ・リーガで失速した。国王杯は勝ち上がったが、準決勝でマジョルカにPK戦にまで持ち込まれて決勝進出の機会を逃した。そしてCLのパリ・サンジェルマン(PSG)戦は完敗。1月27日のラージョ・バジェカーノ戦で敗れた後、3月6日にPSGに敗れるまで、カップ戦含めて10試合で1勝5敗4分けという体たらくである。

 もし久保がラ・レアルでのプレーに集中できていたら、まったく違った結果になっていたはずだ。

 そしてアトレティコ戦は図らずも、今シーズンのラ・レアルを象徴していた。久保、アレックス・レミーロ、ブライス・メンデスの3人は『マルカ』『アス』とも星ふたつだったが、他の選手の出来は星ひとつと凡庸。悪くはないが、物足りない。

 今シーズンを振り返ると、過去2年間で補強した選手たちの不振が目立った。すでに退団したモハメド・アリ・チョ(ニース)を筆頭に、ウマル・サディク、ザハリャンは期待外れ。アンドレ・シウバ、キーラン・ティアニー、アルバロ・オドリオソラも及第点は与えられない。

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