あのファン・バステンも大絶賛! スペイン代表を頂点に導いたのは「守備でゴールをアシストする」18歳の攻撃的MF (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

【ブロゾヴィッチvsガビの攻防】

 それほど多くのチャンスがあった決勝戦ではなかったが、それでも見ごたえは十分あった。ともかく選手たちのテクニックとアスリート能力は高く、さらに美しいのだ。

 特にこの日、私が心奪われたのは、クロアチアMFマルセロ・ブロゾヴィッチがアンカーのポジションから飛び出して前線へ駆け上がっていく姿だった。

 彼がドリブルやフリーランニングで味方と敵を追い越してアタッキングゾーンに潜入する時のスピード感は、チームにより一層の勢いを生むことがある。拮抗したスペイン戦でクロアチアがイニシアチブを握ったのは、左SBイヴァン・ペリシッチの攻め上がり、そしてブロゾヴィッチの飛び出しが利いている時間帯だった。

 そのブロゾヴィッチのマークに手を焼いて、オープンプレーで見せ場を作ることはできなかったものの、18歳とは思えぬ大人のプレーを披露したのが、スペインのMFガビだった。

「ひとりでチャンスを作ることができる選手」という表現は、異能のテクニックやスピードを指すことが多い。しかし、彼は守備という武器を使って、ひとりでチャンスを作ってしまうのだ。

 前半12分、クロアチアのビルドアップを狙ったガビは、ブロゾヴィッチに体を寄せてボールを奪い、思いきりよくシュートを打った。このような「ひとりでチャンスを作る守備」だけでなく、ペリシッチに抜かれた味方を助けに入ってボールを奪うなど、献身性をピッチの至るところで披露した。

 準決勝のイタリア戦(2-1)でジェレミ・ピノが決めた先制弾は、カビのボール奪取から生まれたもの。守備で味方ゴールをアシストする攻撃的MFなんて、ちょっとかっこいいと思う。

「ガビはボールを持たせるとうまく、守備でも利いていて、スライディングをどんどんしてくる敵にとって厄介なMF」

 オランダの「レジェンド」マルコ・ファン・バステンも大絶賛中だ。

 決勝戦らしく、両チームに大きな波(ペース)が行き交うゲームではなく、小さな波が行き交うゲームだった。延長戦前半はクロアチアが少しペースを握ったが、延長後半は足が止まってチーム全体の重心が後ろ気味に。しかし、この時間帯のスペインはMFダニ・オルモが決定機を迎えただけで、ゴールを割ることはできなかった。

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