絶大な人気を誇ったアイマールの時代は遠い過去に 2年連続CL決勝進出の名門バレンシアが降格危機に陥ったのはなぜか (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

【バブル崩壊、オーナーの横暴...】

 ところが、2007年から始まった世界金融危機で、国内のバブルが崩壊した。メスタージャは売るに売れなくなり、工事も頓挫。そして銀行が潰れ、莫大な借金だけが残った。2009年から次々に主力を売り払い(ビジャやダビド・シルバなど)、どうにかクラブを存続させてきた。

 2014年にリムがオーナーになると、経営面はどうにか安定した。しかし会長、スポーツディレクター、監督のクビを次から次に挿げ替え、まるでおもちゃのように扱った。これに批判が起こると、リムの娘が「クラブは私たちのものだから何をしてもいい」と暴論をSNSで発信し、バッシングの嵐となった。

 その間、クラブはずっとパワーダウンしてきた。危機を救ったのは、地元出身の「ザ・消防隊長」ボロ(サルバドール・ゴンサーレス・マルコ)だった。2008年から7度にわたって、"途中登板"でチームを指揮し、火がついたチームを救ってきた。しかし、今シーズンは3連敗で退き、その神通力もきかなかった。

 現在、采配を振るルベン・バラハ、コーチに入閣したカルロス・マルチェナは黄金時代のメンバーだ。しかし、その就任後もチームは2勝1分け5敗と上昇の気配はない。17位アルメリアとは勝ち点差3で、十分逆転は可能だが、19位エスパニョールもバレンシアと同勝ち点だ......。

 1923年に建設されたメスタージャで、バレンシアは華やかな歴史を作ってきた。それを金に換えようとした報いか。今年でスタジアム生誕、100年目になる。

プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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