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名勝負となったカタールW杯決勝。正直だったフランス、狡猾だったアルゼンチン、このわずかな差が勝敗を分けた (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

【ディ・マリアの存在に慌てたフランス】

 対するフランスのサポーターは、いつもに比べれば多い方だったが、数的に著しく見劣りした。PK戦で敗れたひとつの要因と考えていい。後半の途中までエンジンがかからなかった理由かもしれない。半端ないアウェー感の中でフランスは我を忘れた。動きはいつもに比べ極端に重かった。

 キーマンと目されていたアントワーヌ・グリーズマンが抑えられたこと。ウスマン・デンベレの調子がいまひとつだったことも見逃せない要素だ。先発したアタッカー4人のうち3人は不調に終わるという誤算のなかで、終盤、盛り返すことができた理由は、交代で入った選手(コロ・ムアニ、テュラム、コマン、エドゥアルド・カマビンガ、ユスフ・フォファナ、イブラヒマ・コナテ)が活躍したことにある。気がつけば、フランスのフィールドプレーヤーは、エムバペを筆頭にアフリカにルーツを持つ選手で占められていた。そのスピード感溢れる身体能力にアルゼンチンは手を焼いた。

 アルゼンチンは90分で交代カードを1枚しか切らなかった。後半19分、アンヘル・ディ・マリアに代えマルコス・アクーニャを投入した交代になるが、これを機に、ペースはフランスに流れていった。

 逆に言えば、ディ・マリアの存在が、アルゼンチンが好スタートを切る原因になっていた。しかもポジションは通常の右ではなく左。この変化にフランスは慌てたわけだが、アルゼンチンベンチが交代を躊躇している間に、フランスは息を吹き返した。フランスはできれば、アルゼンチンが5人の交代カードを切る前、すなわち正規の90分間に逆転まで持ち込みたかっただろう。延長になると、アルゼンチンのチームとしての体力は復活。ほぼ五分五分の展開になった。その結果、試合は最終盤まで撃ち合いになった。

 フィールドプレーヤーをアフリカにルーツを持つ選手で固めたフランスは正直だった。狡賢いアルゼンチンと比較するとそれは鮮明になった。延長に入ると、その負の側面を垣間見ることができた。今回、北アフリカのモロッコがベスト4入りして気を吐いたが、中央及び西アフリカのチームがW杯の舞台で振るわない理由を、終盤のフランスに見た気もする。

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