日本戦を前にリラックス、笑顔が絶えないスペイン代表にイニエスタが鳴らした警鐘とは

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 カタールW杯のスペイン代表にはこれといった大スターがいないと言われている。いい選手はいるが、かつてのイケル・カシージャス、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタなどに比べると大物感はない。

 そんななかで一番の人気者は、ほかでもない監督のルイス・エンリケだろう。スペインでは今、メディアもサポーターも彼の話で持ち切りだ。ルイス・エンリケは技術や戦術、現代的なサッカーをチームにもたらしただけでなく、人間らしさをもたらした。

 ルイス・エンリケは今大会中、動画配信サービスで連日、1時間以上の動画を配信している。そこで彼の考えや代表の近況など、いろいろなことをざっくばらんに報告している。この配信を始めた時、彼は「とにかく話すのが大好きなんだ。学生時代はしゃべりすぎで、よく教室から出されたりもしたもんだ」と言っていた。

 選手と国民のハートを掌握したスペイン代表のルイス・エンリケ監督 photo by Sano Miki選手と国民のハートを掌握したスペイン代表のルイス・エンリケ監督 photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見るたとえば試合前の選手の性行為については「まったく普通のことだと思う。試合前夜に乱交パーティーはよくないが、私が選手だった頃も、妻とやるべきことはやっていたよ」。

 食生活については、とにかくおいしいものを食べるのが大事だと言い、食材については魚と特に卵を推奨しているそうだ。「アイスにしたりサラダに入れたり、目玉焼きにしたり、卵を一日5、6個は食べたほうがいい」などと言っている。

 このような「おしゃべり」を通じて、代表チームは人々にとってより身近な存在になった。代表の日常を知らせることで国民を巻き込み、当事者にすることに成功したのだ。ピッチ外における監督の作戦勝ちだろう。おかげでドイツと1-1で引き分けても、人々は多少落胆しながらも、誰も声高に批判することはなかった。

 スペインで興味深いのは、やはり若手の台頭だろう。18歳のガビ、20歳のペドリはすでにチームをけん引するまでの存在に成長してきている。同じバルセロナに所属するふたりの相性は抜群で、代表ではルームメイトなのだそうだ。ペドリ以外にも東京オリンピックで決勝までいったU-23のチームからは多くの選手がカタールに来ている。そしてこうした若手たちがうまくベテランたちと噛み合っているのが彼らの強みだ。

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