橋本拳人、激動の半年を経てウエスカ入団。「いろんなことにぶち当たってきた意味は、すべて必ずある」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

苦難にも意味は必ずあるはず

 ロストフでは、ロシア代表監督にもなった名将ヴァレリー・カルピンの指導を受け、マンマーク戦術も習得した。もともと攻守両輪でダイナミックにプレーできるのが持ち味だったが、1年目で6ゴールと得点力も開花。2年目はケガが重なって不運だったが、ロシアでのプレーに野心を燃やしていた。

 しかし今年2月、ロシアがウクライナに侵攻し、本人にはどうしようもない状況に陥った。FIFAからの裁定もあって、外国人選手は次々に退団・移籍。国際情勢により、選択の余地はなかった。

「ロシアでのことは、まだ契約も残っているし、何も言えないんです」

 橋本はそう断ったが、異国で苦難を経験しながらも、間髪入れずに海を渡るのが彼らしい。

「自分のサッカー人生を振り返っても、常に紙一重だったというか、ギリギリを生き抜いてきました。いろんなことにぶち当たってきた意味は、すべて必ずあるはず、と思うほうで......」

 そう語る橋本は、勝負の世界にいるのが好きなのだ。

 神戸に入団した時も、当初はチームがうまくいかないことに悩んでいたが、現実から目を背けなかった。腹を決めて、周りを補完するプレーで貢献。最後は4勝1分けで降格圏から引き上げ、ひとつの使命を果たした。

 スペイン、ドイツ、フランス、ポルトガルなどの1部、2部の多くのクラブが、橋本に興味を抱いている。局面での単純な強さ、周りを使えるインテリジェンス、ゴール前にも飛び込めるダイナミックさは垂涎の的になった。移籍金やローン料なしで、ロシア1部での実績がある日本代表MFを獲得できるのだから、当然だ。

「スペインは、何だかわからないんですが、面白そうって期待しちゃうんですよ(笑)。ドイツもフランスもいいんでしょうけど、できればスペインでやりたいな、って」

 橋本はしばしば、そんな希望を口にしていた。スペインの2部クラブからは他にも、昨シーズンまで1部にいたチームなど複数のオファーがあったが、最後はウエスカに決めた。

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