マイケル・オーウェン、クリスティアン・ヴィエリ、そして審判界のヒーローとヒールはいま (2ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

コロナ禍のイタリアを明るくしたヴィエリ

 現役時代のヴィエリは、6シーズンプレーしたインテル以外は毎年チームを変えていた。そして2009年にアタランタで現役を引退する以前から、興味のおもむくままに、さまざまなことに手を出している。

 2000年にはテレビドラマに出演、また2003年にはパオロ・マルディーニと「スイートイヤーズ」というアパレルブランドを立ち上げる。ハートがブランドマークで、現役時代はユニフォームの下に自社製品を着て、ゴールを決めると脱いで見せていた。

 2012年には国営放送「RAI」の「スターと踊ろう」というリアリティショーに出て、ルンバからワルツ、カポエイラまでダンスを披露し5位に入賞した。これに味を占めたのか翌年には元代表のチームメイト、マルコ・デルヴェッキオと世界を旅して、現地でダンスに挑戦する番組を始めた。

 2018年と2019年の夏には、フットボールテニス(テニスとサッカーを組み合わせたニュースポーツ)の大会、「ボボ(ヴィエリの愛称)・サマー・カップ」を開催し、元選手も数人参加した。2020年には若手起業家と新しいビールブランドを作る。その名も「ボンビア」。「ボンバー(爆撃機=ストライカー)」と「ビア(ビール)」をかけたネーミングだ。また同じ時期にeスポーツの若い才能を育成するトレーニングおよびエンターテイメントのプロジェクトを立ち上げている。

 コロナの流行でイタリアがロックダウンされると、ヴィエリはその発信力を発揮。ほぼ毎晩インスタライブを行ない、アントニオ・カッサーノ、マルコ・マテラッツィ、ハビエル・サネッティ、ルカ・トーニ、フランチェスコ・トッティ、アレッサンドロ・デル・ピエロといった元同僚たちをかわるがわるゲストに呼んでは、ふだんは聞けない現役時代の裏話を聞かせた。ライブは大成功を収め、毎晩多くの視聴者を獲得。コロナ禍で疲弊していた人々を明るい気持ちにした。

 このライブの成功から、ヴィエリは「ボボTV」というチャンネルを立ち上げ、インテル時代の同僚ダニエレ・アダーニ、ニコラ・ヴェントーラ、アントニオ・カッサーノとともに、歯に衣着せぬ調子で今のサッカー界を切っている。特にカッサーノの発言は辛辣で、オンエアされた翌日は必ず新聞ネタになるほどだ。ゲストもトッティ、マンチーニ、クレスポととても豪華で、現在48万人近くのフォロワーがいる。

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