大注目のCL決勝はどんな戦いになるのか。リバプールとレアル・マドリードの強みと弱みを識者3人が解説 (5ページ目)

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勝負どころを熟知しているレアル・マドリード

倉敷 小澤さんは、両チームの強みと弱みをどう分析しますか?

小澤 リバプールは、現在世界で最もプレーエリアやパスレンジが広く、個人的には究極の"個を生かしたサッカー"だと見ています。通常であれば、味方をサポートするために近づいてコンパクトにプレーをするのですが、本当に際立った個を11人揃えているので、それほど選手間の距離を縮めなくても、あれだけのサッカーができてしまう。たとえばトレント・アレクサンダー=アーノルドの一発のパスで相手の背後を突き刺すことができるので、相手は止めようがなくなってしまいます。

 なおかつ、攻撃面における最大の強みは、相手が引いても出てきても、常にゴール方向に対して直線的にプレーをして、決定機を作れる選手が揃っていること。しかも、最近はケガが増えているロベルト・フィルミーノがスタメン落ちするようになりましたが、ルイス・ディアスのような選手を冬に獲得して、それを感じさせないだけの選手層を維持できています。それだけを見ても、現在のリバプールは最強と言っていいと思います。

 一方のマドリードは、今シーズンはハイプレスを封印しているので、どちらかというと相手にボールを持たせて試合をローテンポにし、最終的にベンゼマ、ヴィニシウスを使いながら、高精度のカウンターで仕留める効率的でエコなサッカーで勝ち上がってきました。

 ある意味、それがラ・リーガ勢の生きる道になっていて、今季CLベスト4に2チームが残った要因だと見ています。プレミア勢のようなハイテンポかつハイインテンシティな展開のサッカーを、90分間続けられるチームはラ・リーガにはいないですし、レアル・マドリードもそれができる選手構成ではありません。

 逆に、チームとして勝負どころを熟知しているのが強みで、それが"マドリディスモ"という言葉に集約されていると思います。なかなかそれを説明するのは難しいのですが、危険な時間帯でしっかり守り、要所でしっかりゴールを奪って最後に勝つことができるのが、レアル・マドリードというチームの強さだと思います。

 最近では、戦術などをすべて言語化して論理的に実践するので再現性が生まれますが、レアル・マドリードの戦術には再現性がなく、言語化できない何かがある。それはクラブの歴史やユニフォームの重みも含めての何かだと思っていて、こういった鼎談における表現としては相応しくない話になってしまうかもしれませんが、その部分はストロングポイントして外せない部分だと思います。

倉敷 たしかにそうですね。両チームの特徴だけを見ても、いろいろな楽しみ方ができる決勝戦になりました。後編では、両チームの戦力比較も含めて、さらに細かい部分を展望したいと思います。
後編につづく>>

倉敷保雄さん、小澤一郎さん、中山淳さんが参加!
「noteサッカー勉強会~欧州サッカーの現状と日本のこれからの立ち位置~」
・5月27日(金)20時から開催。
YouTubeでオンライン視聴が可能です。アーカイブも残ります。

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