2021.10.19

ネイマールが四面楚歌で重大危機。たび重なる非難に精神的に疲弊している

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

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 これまでネイマールの引き起こした数々の騒動が伝えられてきた。ピッチ内での諍いやファウルを受けた時の大袈裟なパフォーマンス、ド派手なパーティー、脱税や暴行疑惑......。しかし、今回の問題はこれまでになく深刻そうだ。

 サッカーが宗教にもたとえられるブラジルでは、選手のプレッシャーは半端ではない。しかし、幸いにもブラジルにはいつも数多くのスター選手が存在していた。だから、ペレが不調であればリベリーノが、ジーコが失敗すればソクラテスやファルカンが、ロマーリオがゴールをミスしてもベベットが、ロナウドが本調子でなくてもロナウジーニョがどうにかしてきた。

 しかし、2010年以降、ブラジルからスターが消えた。その年の南アフリカW杯ではドゥンガがチームを率い、ベスト8で敗退した。そのことは覚えているが、誰がプレーしていたかはほとんど印象がないだろう。そんなブラジルのたったひとつの希望がネイマールだった。

 パリ・サンジェルマンでトレーニング中のネイマールとリオネル・メッシ photo by AP/AFLOパリ・サンジェルマンでトレーニング中のネイマールとリオネル・メッシ photo by AP/AFLO この記事に関連する写真を見る 17歳でプロデビューすると、U-20南米選手権で得点王となってブラジルを優勝に導き、ロンドン五輪で4得点をあげて銀メダルの推進力となり、フル代表ではデビュー戦でゴールを決める。そんなネイマールに誰もが大きな期待をかけた。それ以来、約10年にわたって期待はネイマールの双肩にかかり続けてきた。

 その間にも優秀な選手は数多く生まれたが、彼とスターの座を分け合うまで成長した選手はいなかった。今日でもネイマールはブラジルの一枚看板だ。そのことは彼のプレッシャーとなると同時に、免罪符ともなってきた。

 10代後半でネイマールの名が世界に知られ始めた時、彼は本当の意味でスターダムにのし上がる準備ができていなかった。技術は一流でも、精神的にはまだ子供だった。それなのに皆からもてはやされた結果、彼の内面はそこで成長を止めてしまった。その後、唯一のスターである彼が引き起こした数々の問題を人々が許してきたことも、ネイマールの勘違いを増長させてきた。