ファン・ダイク10人はメッシ10人より強い? 現代のセンターバックは超人的な万能性が必要になった
サッカー新ポジション論
第9回:センターバック
サッカーのポジションや役割は、時代ともに多様化し、変化し、ときに昔のスタイルに戻ったりもする。現代サッカーの各ポジションのプレースタイルや役割を再確認していく連載。今回は「センターバック(CB)」を取り上げる。昔に比べると大変な進化が見られるポジションで、現代のCBの活躍ぶりは超人的だ。
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現代のセンターバックの最高峰と言われる、ファン・ダイクこの記事に関連する写真を見る<リベロの登場が進化をもたらした>
長身で屈強、ボールコントロールにも長け、後方から組み立ての中心となる。セットプレーではヘディングの強さを生かして前線に上がって得点源となり、場合によってはサイドバック(SB)もこなすスピードを兼ね備え、ボランチをやるスタミナもある。
現代のセンターバック(CB)は、超人的な万能性を帯びるようになった。
さまざまなタイプのCBが活躍しているが、中央のDFに求められる資質の第一が守備力であることに変わりはない。とくにペナルティーエリア内での守備力、空中戦の強さは必須である。そのため昔からCBは長身で頑健なフィジカルエリートのポジションだった。
そこに新たな概念が加わったのは「リベロ」の登場から。現在はほぼ絶滅したポジションだが、1960~80年代にかけてリベロは非常に重要なポジションだった。
もともと味方の背後をカバーする役割だったリベロへの見方を一変させたのが、フランツ・ベッケンバウアーだ。ユース時代はセンターフォワード、西ドイツ代表でも1966、70年のワールドカップ2大会ではMFとしてプレーしていた。
プレーメーカーとしてすでに世界最高クラスと認められていたが、1970年メキシコW杯後にリベロに収まり、1972年に最初のバロンドールを受賞している。ベッケンバウアーが画期的だったのは攻撃力を付つけ加えたことだった。
ベッケンバウアー以前にも攻撃力に優れたリベロはいたものの、「皇帝」のように全権を握った選手はいなかった。本来のカバーリングだけでなく、後方ビルドアップの中心となり、さらに前線まで進出してラストパス、シュートまでやってのける。フィールドの縦軸を完全に支配するスタイルは、新しいポジションとして注目された。
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