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EL優勝ビジャレアル、エースのゴール量産を支えた「キックの型」 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 流れのなかでも同じで、半身の体勢からニアを打ち抜き、ファーへも流し、GKの出際をチップして決める。自分とボールの関係さえつくってしまえば、あとは自由自在という感じだ。

 シュートモーションからの切り返しも鋭角的でキレがあり、左だけでなく右足もかなり使える。タイミングのいいヘディングシュートもある。

 スピードはそれほど速くはないし、180cm、77kgの体格は均整がとれているが、とりたててフィジカルが強力というわけでもない。派手なテクニックも使わない。しかし、キックの技術がすばらしく、チャンスを逃さない決定力の高さが格別だ。

 すっきりした髪型と容姿は粋でいなせな職人風だが、スペイン人なのでエル・マタドール(闘牛士)と言うべきかもしれない。

<小さな街の大エース>

 18歳でビジャレアルと契約、CチームとBチーム、そしてマジョルカへのレンタルでプレーした。2014年にビジャレアルのトップチームでプリメーラ・ディビジョンでのデビューを果たすが、2015-16シーズンにエスパニョールへ移籍。バルセロナは生まれ故郷である。

 エスパニョールの3シーズンでは、107試合で36ゴールを決めた。この時が本格的なブレイクである。23~25歳なので、そんなに早くもなかった。現在はスペイン代表にも選出されているが、年代別の代表には入っていない。どちらかと言えば遅咲きだった。

 エスパニョールでの活躍が認められて、ビジャレアルに復帰。2年目に18ゴール、3年目には23ゴールとEL優勝のビッグタイトルも手にした。モレノのキャリアピークは、ここ2シーズンなのだ。

 ELはビジャレアルにとって初のビッグタイトルだ。創設は1923年と古いが、その歴史の大半は下部リーグである。なにせ人口5万人の小都市にあるクラブなのだ。

 バレンシア州カステリョンから、ローカル線でさらに二駅ほど。ヨーロッパの小都市ではよくあるのだが、ほぼ線路とホームだけの小さな駅があるだけ。そこに強豪サッカークラブがあるとは思えない、ひっそりした住宅街である。ビジャレアルの躍進は1997年、現在のフェルナンド・ロイグ会長の就任から始まっている。

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