レアルのCL完敗は必然だ。時代の変遷を感じさせる決勝プレミア対決 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 対するジダンの3バックは、サイドアタッカーが両サイド各1人(ヴィニシウス・ジュニオールとフェルランド・メンディ)の典型的な3-5-2(3-4-1-2)だ。両サイドの関係はチェルシーが2人に対し、レアル・マドリード1。どちらの3バックが5バックに陥りやすいかと言えばレアル・マドリードになる。守備的と言いたくなる所以だ。

 レアル・マドリード、あるいはバルセロナに代表されるスペインサッカーは、かつてそうしたサッカーを好んでこなかった。攻撃的サッカーを最大の武器に欧州ナンバーワンの座に台頭した経緯がある。守備的サッカーに染まりかけていた時の王者、イタリアに変わって。

 その天王山とも言うべき試合が、1998年のCL決勝だった。アムステルダム・アレーナ(現ヨハン・クライフ・アレーナ)で行なわれたレアル・マドリード対ユベントス。下馬評で上回ったのは3-4-1-2の守備的なスタイルで臨んだユベントスだったが、勝ったのはレアル・マドリードで、それを潮目に守備的サッカーは退潮。攻撃的サッカーが流行することになった。

 その時、ユベントスの2トップ下として出場していたジダンは、その3シーズン後、レアル・マドリードに移籍。「攻撃的サッカーのもとでプレーしたかった」と、スペインリーグでプレーする念願が叶ったかのようなコメントを残したものだ。

 レアル・マドリードがチェルシーに敗れ去る姿を見ていると、およそ20年前の話が蘇ってくるのである。監督ジダンは、当時と真逆の思考でレアル・マドリードを率い、そして敗退に追い込んだ。時代は巡るとはこのことである。

 準決勝第1戦後に記した原稿(「マンチェスター・シティのレアルとPSGにはない貴重さとは。CL決勝へ前進」)でも触れたとおり、レアル・マドリードのサッカー(バルサもだ)は、その後、スーパースターに依存するスタイルに微妙に変わっていく。

 強さの源泉は、攻撃的サッカーというより、クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシの個人的な力に頼るものに、気がつけば移行していた。レアル・マドリードはBBC(ガレス・ベイル、ベンゼマ、ロナウド)で、バルサはMSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマール)で、それぞれ一時代を築いたわけだが、現在は、言うならばその「祭りの後」という印象だ。

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