小野伸二とベルカンプ。名手の究極トラップで感じたポジションの違い

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

異能がサッカーを面白くする(3)~超絶トラップ編

 トラップがうまい選手と言われて頭をよぎるのは小野伸二だ。2001-02シーズン、フェイエノールトに移籍した頃、左右両足とも足元を見ないでボールを止める小野の技術に、現地の指導者は舌を巻いていた。オランダ人選手でこのマネができる選手はいない、と。

「止めて蹴る」とは、サッカーの基本動作だ。止めることがうまいか下手か、蹴ることがうまいか下手かは、よい選手か否かを語る時に外せない、クルマの両輪のような要素になる。

 語られる割合が多いのは、「止める」より「蹴る」のほうだ。蹴るにはパスも含まれる。キックを含むパスの精度、そしてそのセンスなど、供給源としての能力に関心は集まりやすい。パスの出し手としてどれほど魅力的かは、選手を評価する際の決め手になりがちだ。

 ゲームメーカーが賛美される、大きな理由のひとつである。9番より10番。日本のサッカー界に「中盤至上主義」や「10番幻想」が根強く残る理由でもある。だが、10番の役割は大きく様変わりした。かつては10番と言えば司令塔。トップ下という俗称も2トップ下を意味していた。

 それがいまやトップ下は、1トップ下とほぼ同義語になった。10番は中盤というよりFWに接近した。司令する側というより、される側だ。パスの受け手としての色が増している。1トップ(センターフォワード=CF)との関係性にもよるが、問われているのはポストプレーヤーとしての能力だ。相手ディフェンダーを背後に従えながらプレーする能力。すなわち、多少無理な体勢でもボールを確実に止めるトラップ技術が求められた。それは、オランダ人の指導者が舌を巻いた小野のトラップ技術とは、少々別次元のモノであることは言うまでもない。

オランダ代表では79試合に出場し、37得点をあげたデニス・ベルカンプオランダ代表では79試合に出場し、37得点をあげたデニス・ベルカンプ トラップの技術が圧倒的に高い1トップ下。現代的な10番と言われて連想するのは、元オランダ代表のデニス・ベルカンプだ。アヤックス、インテル、アーセナルでプレー。93年にバロンドールの投票で2位となった実績がある。

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