超先鋭的。アーセナルのアルテタ監督の難解な戦術を読み解いてみた
サッカー名将列伝
第20回 ミケル・アルテタ
革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてきた、サッカー界の名将の仕事を紹介する。今回は昨シーズンからアーセナルを率いているミケル・アルテタ監督。トータルフットボールの末裔とも言える、先鋭的なサッカーを展開し、戦術マニアたちの探求心を掻き立てている。
◆ ◆ ◆
<複雑系サッカー>
ミケル・アルテタ監督の率いるアーセナルは、おそらくいま最も「難解な」サッカーをするチームだと思う。なぜ難解かというと、従来のシステムやポジションでゲームを見ていると、非常にわかりにくいからだ。
昨シーズンからアーセナルを率いているミケル・アルテタ監督 基本システムは3-4-3だが、局面によってかなりポジショニングが変化する。さらに選手の入れ替わりも多く、システムに選手を当てはめようとすると、まずわけがわからなくなるのだ。難解度がマックスだった第4節のシェフィールド・ユナイテッド戦で見てみよう。
GKレノ、DFは右からダビド・ルイス、ガブリエウ・マガリャンイス、キーラン・ティアニー。MFは右からエクトル・ベジェリン、モハメド・エルネニー、ダニ・セバージョス、ブカヨ・サカ。FWはウィリアン、エディ・エンケティア、ピエール=エメリク・オーバメヤンだった。
アーセナルの基本的な3-4-3の形 通常、3-4-3で攻め込んだ時のイメージは、サイドハーフが幅をとって、ウイングがハーフスペースへ入る。ボールの後方に2ボランチと3バックだろう。
しかし、アーセナルは攻め込んだ際に残すDFは、3人ではなくふたりなのだ。左サイドはティアニーが高いポジションをとり、それに伴ってサカがハーフスペースに入る。
さらにややこしいことに、ビルドアップの時にボランチのエルネニーがCBの隣に下りてきて3枚回しになっていた。もうこの時点で、すっかり最初の3-4-3ではなくなっている。
1 / 3