2020.08.28

速い、巧い、強いだけじゃない。ニャブリが示す近未来サッカースター像

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカースターの技術・戦術解剖
第23回 セルジュ・ニャブリ

<スピード、テクニック、パワーが融合>

 ゴールしたあと、茶道の茶筅(ちゃせん)を回すような仕草をするのは、NBAのジェームズ・ハーデンのマネだという。「相手を料理してやった」との意味だそうだ。

CLで大活躍。バイエルンの優勝に貢献したニャブリ 父親はコートジボワール人、母親がドイツ人。地元シュツットガルトの下部組織からアーセナルに移籍し、16歳でリザーブリーグに出場、17歳でプロ契約した。

 しかし、アーセナルでは出場機会が少なく、ウエスト・ブロムウィッチへのローンを経てブレーメンに完全移籍する。ブレーメンでは11ゴールと活躍、2017年にバイエルンへの移籍が決まった。ここでもホッフェンハイムへ貸し出されたが、次のシーズンにはバイエルンへ呼び戻された。

 バイエルンの攻撃の中心だったアリエン・ロッベン、フランク・リベリーの後継者となったセルジュ・ニャブリは期待に応え、2018-19シーズンはロベルト・レバンドフスキに次ぐ10ゴールをゲット。2019-20シーズンもリーグ戦12ゴールを記録。さらに多くのアシストでも貢献し、その地位を不動のものにしている。

 スピード、テクニック、パワーが融合したニャブリのプレーは、バイエルンの勢いを象徴していた。

 タッチ数の多いドリブルは、リオネル・メッシを思わせる。右サイドからカットインしての左足シュートがすばらしいのだが、ニャブリは右利きだ。両足で強いシュートを打てるのは強みである。

 バイエルンは後方のパスワークから、一気に両サイドへ展開するのが十八番だが、その時のロングパスの引き出し方がうまい。動き方は単純で、少し引いて足元でもらうようなモーションから、爆発的なスプリントで裏のスペースを突く。相手DFが一歩前に出た瞬間に裏を突くスピードが格別だ。

 パスの出し手とのタイミングも大事だが、ニャブリのスピードがあるから成立していると言える。また、動き方がシンプルだからこそ、出し手も合わせやすい。