バルサ大敗で「メッシ頼み」時代の終焉。救いの要素が一切なかった

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reutes/AFLO

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 準々決勝以降が90分の一発勝負となった2019-20シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)。15日までにその4試合を終え、パリ・サンジェルマン、ライプツィヒ、バイエルン、リヨンが準決勝進出を決めた。

 ライプツィヒがアトレティコ・マドリードを下した一戦。そしてリヨンがマンチェスター・シティを破った一戦も事件と言えば事件だが、リスボンのダ・ルスで行なわれた一戦は、それを超える衝撃的な結末になった。

 バルセロナ2-8バイエルン。

 バイエルンを優勝候補に挙げる一方で、バルサのサッカーに冴えはないと見ていた筆者にとって、バイエルンの勝利は順当に映る。だが、こんなスコアで終わるとは予想だにしなかった。

バイエルンに次々とゴールを決められ、虚ろな表情のリオネル・メッシ(バルセロナ)バイエルンに次々とゴールを決められ、虚ろな表情のリオネル・メッシ(バルセロナ) ホーム&アウェー方式による180分間の試合の合計スコアではない。90分で8失点だ。バルサは10分強ごとに1回、被弾したことになる。

 これは大事件に値する。

 8点で想起するのは、2002年日韓共催W杯の「ドイツ8-0サウジアラビア」だ。この時、ドイツは、サウジアラビアがギブアップの状態であるにもかかわらず、無遠慮に最後まで攻め立てた。7-1でドイツが開催国ブラジルに大勝した2014年W杯準決勝もしかりである。試合の途中から戦意喪失し、ただ打たれるだけの哀れな集団になっていたブラジルに、ドイツは攻撃の手を緩めなかった。

 2001年。トルシエジャパンがスタッド・ドゥ・フランスでフランスに0-5で敗れた試合があったが、フランスは後半20分過ぎると手を抜いた。前進しようとするロベール・ピレスに、ベンチは「行くな」と指示を与えた。フランスには日本の息の根を完全に止めようとしない優しさがあった。ドイツとは一線を画す気質である。

 容赦なく相手を木っ端微塵に粉砕するのがドイツ式。この試合に先発したドイツ人は11人中6人で、加えて監督ハンス=ディーター・フリックもドイツ人だ。バイエルンはクラブチームなので、ドイツ気質を完全に重ね合わせることはできないが、それでも8割方は一致すると考えていいだろう。

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