福田正博が納得。ハーランドを見ればゲットゴールの法則がわかる (4ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

 日本の場合、子どものサッカーでも、Jリーグでも、ボールを失わないようにすることを気にしてか、横パスが多い傾向がある。しかし、ヨーロッパでは小さな頃から縦パスを強く意識していて、FWはクサビの縦パスを受けて攻撃の起点になれなければ、試合で使ってもらえない。必然的にポストプレーの技術を高める環境がある。

 こうした特長でゴールを量産するハーランドは、FWにしては珍しい堅実性も備えた選手だ。ゴールを量産できるストライカーは、王様になりやすいもの。ズラタン・イブラヒモビッチしかり、クリスティアーノ・ロナウドしかり、リオネル・メッシしかり。ひとたび攻撃になれば、「俺のところによこせ」と言わんばかりにプレーして結果も出すが、守備にはエネルギーを使わない。

 その点、ハーランドはチームのために守備でも一生懸命にボールを追いかけるため、監督とすれば計算の立ちやすいFWだ。

 まだ19歳のハーランドも、王様になる可能性はあるものの、彼のこれまで歩んできたキャリアを見ていると杞憂に終わりそうに感じている。各国のビッグクラブからのオファーも届いていたなかで、ザルツブルクからドルトムントに移籍した決断から、自分自身を冷静に客観的に分析できているのが伝わってくるからだ。

 10代でビッグクラブから声がかかれば、ほとんどの選手がそちらを選択する傾向が高い。しかし、ハーランドは出場機会を確保できる環境を優先してドルトムントを選択した。「試合に出られないと成長が止まってしまう」からだ。

 堅実な選択ができるのは、父親も元プロサッカー選手で、子どもの頃から厳しい世界で生き抜く難しさを垣間見てきたからかもしれない。彼自身が現在のサッカー界のなかで、どういう立ち位置にあるかをしっかり分析できているからでもあるだろう。そして、こうしたメンタルは、プレーにもよく表われていると思う。

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