塩谷司を変えた母親と恩師の言葉「あの日から、あきらめなくなった」 (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by Getty Images


 当時18歳だった塩谷は、こうも思ったという。

「4年間、こんなにうまい人たちと一緒にサッカーをするのか。俺、もうダメかもしれないな」

 幸運にも1年生の前期リーグはメンバーに入ると、途中出場ではあったが数試合でチャンスをもらった。ただ、自信のなさがプレーにも表れていたのだろう。徐々に出番は遠のくと、ついにはメンバーにも選ばれなくなった。

「同級生にも先発で試合に出ている選手がいて、『こういう人がプロになるんだろうな』って思いましたよね。そこから、『俺はもう無理だな』って思って......。今、考えると、その時から真面目にサッカーをやらなくなってしまったんですよね」

 徳島で育った青年にとって、都会の街は刺激もあれば、誘惑も多かった。サッカーが楽しくなく、遊ぶことに意識が奪われ、どうすれば練習をサボれるかと考えることもあった。

「サッカー部の練習は本当にきつくて、当時は走るだけで1日が終わる日もありました。でも俺は、自分が悪いのではなく、監督が自分のことを好きじゃないだけだって思っていたんです。周りよりもできるのに、評価してくれないって。

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