低迷していたバイエルンを立て直した新監督。譲れない点が2つある (3ページ目)

  • 鈴木達朗●文 text by Suzuki Tatsuro
  • photo by Getty Images

 さらに、懸念されていたセンターバックが固定されたことも大きい。左利きで、これまで左サイドバックを主戦場としてきたオーストリア代表のダビド・アラバが、この重責を務めている。フリックが最も評価しているのはコーチングを含めた、ピッチ内外のコミュニケーションだ。

 アラバはミュラーと同様、数少なくなったバイエルンの育成機関出身。フィリピン人の母、ナイジェリア人のミュージシャンを父に持つ彼は、15年もクラブに在籍し、中堅として若手とベテラン、外国人選手とドイツ語圏の選手たちの橋渡し役を務める。

 このほかに魅力的な若手選手の成長もある。

 アラバがセンターバックに回った背景には、ドイツ代表DFのニクラス・ジューレと今季新加入のフランス代表DFのリュカ・エルナンデスの長期離脱があるのだが、彼らが不在の間にカナダ代表の19歳、アルフォンソ・デイビスが左サイドバックとして台頭したことも大きい。 CLチェルシー戦での突出したプレーは、際立っていた。DFラインを助け、左サイドを縦横無尽に動き回り、ビルドアップ、チャンスメイクと活躍を見せた。

 2018年夏に17歳でバイエルンにやって来た時、すでに1000万ユーロ(12億円)の高値がついていたが、今では "お買い得"と言われるほどだ。市場価格の目安を示す『トランスファーマルクト』では、5000万ユーロ(約60億円)まで価値を高めた。2023年まで残っていた契約は近いうちに延長され、これから10年はバイエルンの左サイドは盤石と言われている。

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