メッシの私生活を守る豪邸。スーパースターが欲しがる物件の条件は? (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 バーク「月1万2500ポンド(約175万円)です」

 選手「それはすばらしい! 前の家は月1万8000ポンド(約250万円)だったからね」

 フットボール選手がどういう家を好むのか、不動産業者はよくわかっている。古くて伝統のある家はいらない。

「たいていの選手は、モダニズムの家が好きだ」と、ソープは言う。

「リノベーションが必要な家は欲しがらない。体ひとつで、すぐに住める家を求めている」

 ソープは最近、完璧な家具付きの物件をある選手に売った。

「引っ越しの日に、彼はスーツケースをひとつだけ持ち、シェフを連れてやって来た」

 セキュリティーやプライバシーの問題は、もちろん重要だ。フットボール選手の家は盗難に遭いやすい。住人が留守にしている日は世界中が知っているし、家に高級時計や宝石や現金が置かれていることも多い。ときにはクラブが自前のセキュリティー担当者を派遣して、選手の家のセキュリティーシステムを厳しくすることもある。

 不動産業者バートン・ワイアットで住宅販売を統括するスティーブン・ラブレイディは、フットボール選手は「いろんなおもちゃ」を欲しがると言う。

「ミニシアターやシミュレーションゴルフ、室内プールに大きなバスタブもお好みだ」

 ゲーム専用室も人気がある。元イングランド代表FWのピーター・クラウチは著書『フットボール選手になる方法』の中で、自宅にゲーム室を作りたがる選手が多いと書いている。

「プレイステーションでフットボールゲームの『FIFA』をひと晩中やったり、自宅にあるのだから儲かるわけでもないスロットマシンに夢中になったりする」

 さらにクラウチは、自宅に大きな水槽を置いて「本物のサメ」を飼っていたチームメイトがいたとも書いた。

 こんな選手たちを笑うのは簡単だが、忘れてはいけないことがひとつある。有名フットボール選手は、自分の家に閉じ込められている囚人のようなものだ。外に一歩出たが最後、ファンが殺到してきて、一緒に自撮りをしてほしいとせがまれる。フットボール選手にとって、家は自分を守る城なのだ。

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