原口元気はジレンマに直面。
宮市亮は「どうしていいかわからない」

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

 原口元気にとって、ブンデスリーガ2部でプレーするのは2度目になる。最初は2017-18シーズンの後半だった。当時所属していたヘルタ・ベルリンで出場機会が与えられず、苦肉の策としてフォルトゥナ・デュッセルドルフでのプレーを選択した。ロシアW杯を半年後に控えており、原口にとっては試合に出続けることが何よりも必要だった。この選択は大正解だった。12試合に先発して1得点5アシスト。チームの1部昇格にも貢献した。

 今季は所属するハノーファーが2部に降格。原口はプレミアリーグでプレーしたいという目標をたびたび公言しており、夏には移籍の噂も報じられたが、具体的な移籍先は現れなかった。2部には2部の、1部とはまた違う厳しい戦いがある。

ザンクトパウリ戦にフル出場、厳しい表情の原口元気(ハノーファー)ザンクトパウリ戦にフル出場、厳しい表情の原口元気(ハノーファー) その原口が「一番、きつかった」というのが、6試合ぶりに勝利を挙げたザンクトパウリ戦だ。試合後のミックスゾーンで、原口は対戦したザンクトパウリの宮市亮に話しかけた。「めっちゃきつい。なにこれ? 一番きつかったよ」と、笑いながらではあるが、険しい表情を浮かべた。

 いかにも2部らしい試合内容だった。お互いに守備に人数をさき、ボールを奪ったあとは、意図の感じられないロングボールを蹴って、あとは前線に任せる。ザンクトパウリもハノーファーも同じような戦い方を選択した。前半7分、ハノーファーが最終ラインから前線に長いボールを入れた。ザンクトパウリのセンターバックが跳ね返す。ボールがこぼれたところにいたリントン・マイナがそのまま運んでシュート。ネットに突き刺してハノーファーが先制すると、結局、それが決勝点となった。

 トップ下でフル出場した原口の頭上をボールが何度も越えていく。試合後の原口は徒労感を隠せなかった。

「前半から全然ボール入ってこないし、ただ(ボールを)追いかけ続けている感じだったから」

 6試合勝ちのないザンクトパウリと、5試合勝ちのないハノーファー。どんなに見苦しくても勝ち点3がほしい。そのことだけは伝わってきた。

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