「スター誕生」。欧州王者を苦しめた
ザルツブルクに南野拓実あり
「南野拓実、スター誕生か――」。英BBC放送がそう伝えたのは、後半34分のことだった。
10月2日に行なわれたリバプールvsザルツブルクのチャンピオンズリーグ・グループリーグ第2節。試合をテキストで実況していた英BBC放送は、後半11分にゴール、後半15分にアシストを記録し、さらに守備でも自陣深くまで戻って敵を追いかける南野の姿に目を奪われたようだ。BBCのコメントどおり、ザルツブルクの南野がアンフィールドで躍動したと、そう断言していい試合内容だった。
リバプール戦で圧倒的な輝きを放った南野拓実 もっとも、前半はザルツブルグが大苦戦を強いられた。欧州王者リバプールを相手に、前半36分までに3つのゴールを許した。スコアは0−3。チームが押し込まれるなかで、日本代表MFも守備に追われる時間が長く、目立つプレーができないでいた。
苦戦の原因は、ザルツブルクの戦術にあった。4−4−2の布陣を採用し、南野は右サイドMFとしてプレー。特徴的なのは、ボール保持時になると南野を含めたふたりのサイドMFが中央に絞るようにポジションを移すことだった。
この策が仇(あだ)となった。選手が中央部に集まるため、ボールを奪われると一気にサイドスペースの人員が足りなくなっているのだ。対するリバプールは、4−3−3を採用。ぽっかりと空いている、そのサイドスペースにSBや両翼の選手が侵入し、攻撃の起点を作った。
それゆえ、ザルツブルクはボールを奪われる度にピンチに陥った。リバプールは自軍のSBがワイドエリアでボールを持つと、すぐに周りの選手がフォローに入る。一方のザルツブルクはSBがひとりで対応。つまり、ワイドエリアでザルツブルクは1対2の数的不利の状況を作られた。
そして、右サイドMFの南野も守備に追われた。この試合でベンチスタートの奥川雅也は「後手にまわる感じだった」と、ピッチの外から戦況を見ていたという。
転機になったのは、ザルツブルクが前半30分に行なった4−3−1−2へのシステム変更だった。
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