オランダ最下層→1部で活躍。ファン・ウェルメスケルケン際がいい働き (3ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 5月、カンブールは昇格プレーオフに敗れ、2部リーグ残留が決まった。そして、際はカンブールを退団した。無所属になるリスクもあったが、オランダより上位リーグのクラブからもオファーが届き、いくつかの選択肢の中からズヴォレでのチャレンジを選んだ。

 開幕スタメンの座は勝ち取れなかったものの、第2節のユトレヒト戦で13分、第4節のスパルタ・ロッテルダム戦で34分と出場時間を徐々に伸ばし、第5節のエメン戦でようやく先発出場の機会を得た。すると、開幕から1分3敗と不振に陥っていたズヴォレは、際がスタメンで出始めてから2連勝を飾った。

 練習から地道に頑張り、コツコツと出場時間を伸ばしていった際の姿は、オランダでの彼の成長と重なる。

 日本の高校を卒業し、オランダに渡ってオランダ2部リーグの小クラブ、ドルトレヒトのリザーブチームでキャリアをスタートさせた際は、やがてプロ契約を勝ち取り、トップチームの中心選手になった。そして2シーズン前に、オランダ2部リーグでは中堅的存在のカンブールに引き抜かれた。6年間の積み重ねの末、際はようやくオランダ1部リーグという舞台まで辿り着いたのだ。

 試合を終えた後、ズヴォレを率いるヨン・ステーへマン監督は際に、「練習の成果が出たな」と声をかけた。その時、際の頭の中に浮かんだのは、ズヴォレでの練習ではなく、帰省した時に練習参加したヴァンフォーレ甲府でのトレーニングだった。

「僕は甲府のアカデミー出身なので、(帰省時は)ヴァンフォーレでトレーニングしていたのです。何度も何度も金園英学さんにクロスを合わせる練習を繰り返した成果が、このワールワイク戦で出ました。また、右サイドバックの細かな動きは、武岡優斗くんからいろいろ教わったんです」

 現在、際は25歳。今季のオランダリーグには6人もの日本人選手がプレーしているが、際をのぞけば全員、東京オリンピック世代だ。際はオランダ組の最年長である。

「監督の信頼を得て、今シーズン最後までスタメンを張れるようにすれば、自分自身にとって次のステップが見えてくる。それを目指して、きっちり結果を残していきたい。最年長としてがんばっていきます」

 オランダプロサッカー界の最下層から、ここまで這い上がり、さらに上を目指そうとする際は、いろいろな人から刺激をもらって成長してきた。そしてまた、その姿を知る人たちも、彼から刺激を受けているのである。

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