オランダ最下層→1部で活躍。ファン・ウェルメスケルケン際がいい働き (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

「あそこまでえぐったらGK とDFの間にボールを通せないので、ペナルティスポットあたりに選手が来るのを待って、ボールを入れるのをワンテンポ遅らせた」

 際のラストパスを受けてゴールを決めたハマーは、開幕から4試合は右サイドバックとして先発し、際にとってはライバル的な存在である。そのハマーはゴールを決めた直後、際のことを抱きかかえながらゴール裏のサポーターに向かって咆哮した。

「ハマーはもともとMFの選手。お互いに結果を残し、チームも勝ったので、彼が右サイドバックに戻ってくることはしばらくないでしょう」

 試合が終わると、際はピッチの上に座り込んだ。疲れていたのか、それとも達成感か?

「両方ですね。だけど、喜びの気持ちのほうが大きかった。このチームはボールを供給できる選手が多く、(ボールをつなぐ)サッカーができるチームなので、走ればボールが来る。かつ、それが無駄走りになっても、それを使ってスペースを作ることがうまいチーム。無駄走りが生きているので、肉体的に疲れていても、メンタル的にはあまり疲れていない。

 前にいたチームでは、プレアシストやアシスト未遂は多かったんですが、アシストそのものは少なかった。ズヴォレのレベルになると、前線に仕留めてくれるアタッカーがいるので、本当にありがたいです」

「前にいたチーム」とは、オランダ2部リーグのカンブール・レーワルデンのこと。昨季オランダ2部リーグのフィールドプレーヤーとして唯一、際だけが全試合フル出場を果たし、ベスト11にも選出された。カンブールとの契約は昨季いっぱいだったが、クラブ側には1年延長のオプションがついていた。

 3月、カンブールのテクニカルダイレクターは際に、「オプションを行使するからな」と告げた。しかし際は、「待ってください。僕には拒否することもできるんです」と答えた。カンブールとの契約書には、「クラブが1部に昇格できなかったら、選手サイドはオプションを断ることができる」という特別条項があったからだ。

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