久保建英、画期的リーガデビューも
ほろ苦い15分。攻撃に絡めず

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 リーガ・エスパニョーラ第3節、バレンシア対マジョルカ戦。待ちわびた瞬間がやってきたのは78分のことだった。

バレンシア戦でスペイン1部デビューを果たした久保建英(マジョルカバレンシア戦でスペイン1部デビューを果たした久保建英(マジョルカ マジョルカはその直前、相手にCKを与えていた。そのCKを待って投入したかったのだろうか。久保建英はベンチ前で少々待たされた。立て続けにもう1本、CKを与えると、今度はレフェリーが給水タイムを指示した。少しでも早くピッチにたちたいという気持ちは焦らされた。

 2本目のCKのピンチを切り抜けると、18歳の久保はバレンシアの本拠地メスタージャでスペイン1部リーグデビューを果たした。輝かしいその第一歩を記したこの場所、この時は、久保にとって忘れられないものになるはずだ。

 その時間帯、すでにマジョルカはバレンシアに2点のリードを許していた。2点ともPKをダニエル・パレホに決められた。マジョルカは序盤こそチャンスをつかんだものの、それを逃したあとは、終始バレンシアのペースだった。昨季リーガ4位、スペイン国王杯優勝のバレンシアはボールを支配しており、PKを得なくても得点をしていただろう。

 久保は3人目の交代だった。アウェーでの0-2は、新人にとってプレッシャーなくプレーできる状況だ。だが右MFに入った久保にはなかなかパスが出てこない。ボールを引き出そうと下がってきても、別の選択肢が使われた。出場から5分後の83分、ボランチからパスを受けた久保はスルーパスを通した。とてつもなく長くも感じられた5分間を経て、ようやく久保はマジョルカの攻撃に参加できた。

 その直後、バレンシアはイ・ガンインを投入する。久保と同年齢で、比較対象になることの多い韓国人プレーヤーだ。バレンシアの下部組織で育ち、すでにトップデビューも果たしている。期待の若手なのだろう。出場と同時にスタジアムは盛大な拍手に包まれ、その直後に中盤をドリブルで切り裂くと、再び大きな歓声が挙がった。

 86分、久保は右サイドでドリブル突破を試みたが、相手のサイドバックに阻まれた。なかなか攻撃に絡めないまま時間が進み、アディショナルタイムは3分。バレンシアのサイドチェンジをマジョルカのディフェンダーがクリアすると、ボールが久保の足元に転がってきたが、久保はボールを出しあぐねてしまった。結局、試合は0-2のまま終了した。

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