移籍?残留? 久保建英は順調な進化のために今季をどう過ごすべきか (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

 久保は10歳から14歳までバルセロナに所属していたため、スペイン語には不自由しない。もちろん、これがアドバンテージなのは間違いない。しかし、言葉ができるからといって、コミュニケーションが成立するわけではない。久保はスーパースターに囲まれても、まったく物怖じせずに、自信をもって、ピッチの内外でコミュニケーションを重ねている。だからこそ、これだけ早くからチームメートに認めてもらっているのだ。

 また、久保は日本人らしい勤勉さを持ちながら、18歳にして欧米人のような自己主張もできる。これは、これまで10代で海外移籍した日本人選手が持ち合わせていないものだろう。圧倒的なスキルがあったうえで、練習だけではなく、日常生活でのコミュニケーションで味方のキャラクターをしっかりと把握して、意思の疎通が図れている。途中出場でも久保にボールが集まるのは、こうした日頃からの積み重ねがあるからこそだ。

 久保のプレーを見ていると、ほかの日本人選手は海外移籍が「挑戦」と言われることが多いのに対し、久保は「いるべき場所に戻った」という印象を受ける。もちろん、バルセロナとレアル・マドリードの違いはあるが、10歳の頃からバルセロナの下部組織で世界有数の厳しい競争を勝ち抜きながらも、FIFAの規定によって途中離脱を余儀なくされていた経緯を考えると、遠回りながらようやく戻ってきたというところだろう。

 その本来いるべき場所で、ここからの1年で久保がどこまで進化を遂げていくのか。EU圏外の外国人選手枠の関係もあるが、国内カップ戦などで起用される可能性も秘めている。世界最高峰のビッグクラブのトップチームで、今シーズン中にデビューできるかわからないが、来年の東京五輪や、その先のW杯で日本代表の中心を担うであろう久保の歩みをしっかりと見届けていきたい。

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