香川真司が移籍したサラゴサの実状。指揮する名将は胸の高まりを吐露

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by MarcaMedia/AFLO

 8月6日の監督会見だった。

「衝撃的で夢のようなことがこれから起きると、私は確信している」

 スペイン2部、レアル・サラゴサのビクトル・フェルナンデス監督は、記者に向かってそう示唆していた。遠回しな言い方で、具体的な内容については一切述べていない。しかし、主力のスペイン人攻撃的MF、ペップ・ビエルをデンマークのコペンハーゲンに500万ユーロ(約6億円)で売却したことで、代わりとなる目玉選手と交渉しているのは明らかだった。

 そして8月9日、サラゴサは日本代表MF香川真司と契約したことを発表した。

スペイン2部のサラゴサに移籍し、初練習に参加した香川真司→スペイン2部のサラゴサに移籍し、初練習に参加した香川真司→「サラゴサの衝撃は、香川だった!」

 同日、スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は高揚感を匂わせた記事を掲載している。サラゴサの生え抜き選手で、マンチェスター・ユナイテッドで同僚だったアンデル・エレーラ(パリ・サンジェルマン)、ボルシア・ドルトムントでチームメイトだったマルク・バルトラ(ベティス)など、スペイン代表選手が次々にSNSで祝福のメッセージを送った。2部で7年目と苦しい時代を過ごすサラゴサにとって、救世主降臨のような賑いだ。

「我々サラゴサがなすべきは、なにより1部昇格。その点、今の私はとてもワクワクしているし、気持ちは落ち着いている」

 冒頭の会見で、Ⅴ・フェルナンデス監督は心境を吐露していた。思わず、香川という名前を出しそうだった。それほどの胸の高鳴りだったのだろう。

 では、香川獲得で1部昇格に挑むサラゴサはどんなチームなのか?
 
 1990年代にサラゴサは黄金期を迎えている。

 1992-93シーズンにスペイン国王杯で準優勝を飾ると、1993-94シーズンは同杯で優勝するとともに、1部リーグでも3位と大きく躍進した。当時、ヨハン・クライフが率いて世界最強を誇ったバルサを、6-3で打ち負かした試合は語り草となっている。1994-95シーズンには、カップ戦優勝クラブとして出場したカップウィナーズカップ(現行のヨーロッパリーグ)で快進撃を見せ、アルゼンチン人FWフアン・エスナイデルの大暴れで頂点に立っている。

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