香川真司にとってのドルトムントとは?長引く移籍先探しに思う (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

 そんな香川とつい比較してしまうのは、ドルトムントから他のチームに移籍して、再びドルトムントに戻った同世代の選手たちだ。

 たとえば、現在は大迫勇也のチームメイトとしてブレーメンでプレーするヌリ・シャヒン(30歳)。もともとドルトムント生えぬきの選手で、クラブの将来を担う存在として期待され、リーグ最年少出場記録やリーグ最年少得点記録なども更新した。2011年、レアル・マドリードに移籍。だが、スペインで活躍することはできず、いったんリバプールにレンタルされ、ドルトムントに戻ってきたのが2013年だった。

 そんなシャヒンをファンは暖かく迎えた。昨シーズンの開幕を前に戦力外となって、ブレーメンへの移籍を選択したが、その時も、スタジアムで花束が贈呈されるなど、気持ちよく見送られている。シャヒンは今もドルトムントを「僕の心のクラブ」と言っている。

 今季、バイエルンからドルトムントに戻ってくるマッツ・フンメルス(30歳)もそうだ。2016年、ドルトムントからライバルのバイエルンに移籍する際には、ひと悶着あった。「どうしてもバイエルンに移籍したい」と、わざわざドルトムントの公式サイトで表明するという不可解な出来事もあり、ちょうどその時期に行なった香川のインタビューの際には、クラブの広報担当者から「マッツの話はナシでね」と言われたものだ。クラブが「その話題には触れてくれるな」と言うほど、デリケートな問題だったのだ。

 実際、バイエルンに移ってからの彼は、ドルトムントでの試合で常に大ブーイングに見舞われている。そんな経緯があっても、フンメルスはドルトムントに戻ってきた。

 香川は、シャヒンやフンメルスのようなクラブの下部組織育ちの人間ではない。それでもブンデスリーガ2連覇時代の主役であり、いまだにその功績を称える声は絶えない。それはドルトムント内部にとどまらない。ベシクタシュに移籍したのと同じ時期、やはり候補に挙がっていたハノーファーでは、選手たちが「カガワが来るらしいぞ」とざわついた。それぐらいドイツではビッグネームであり、リスペクトを集める選手なのだ。

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