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CL決勝を杉山氏が現地で戦術分析。
両チームとも通常と違うキャラだった (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 10年前のパク・チソンは、後半のなかば、0-1でリードされた状況でディミタール・ベルバトフと交代でピッチを後にしている。好選手ではあったが、追いかけなければならない状況では、攻撃力という点で弱みを抱えていた。一方、ソン・フンミンはチームの攻撃の中心として、このCL決勝のピッチに立っていた。10年前よりスタンドに揺れる韓国国旗は誇らしげにたなびいていた。

 アジア人、隣国のよしみで買いかぶるわけではないが、スパーズの敗因は、この選手の能力を生かせなかったことにある。攻撃できる状況にもかかわらず、スパーズはキチンとした攻撃が最後までできなかった。具体的には、真ん中に固まってしまった。

 それはリバプールの前線の並びと比較すれば一目瞭然だ。ソン・フンミン、クリスティアン・エリクセン、デレ・アリ、ハリー・ケインで構成する4-2-3-1の「3-1」は絶対的な幅に欠けた。ポチェッティーノが4-2-3-1と同じくらいの頻度で用いる3-4-2-1の「2-1」と同程度の幅しかなかった。

 カウンター系の攻撃の幅で遅攻をしているような感じだ。よって、攻撃に立体感ができなかった。サイド攻撃も発揮できなかった。単純なゴリ押しサッカーに成り下がってしまった。

 ソン・フンミンにも終盤シュートチャンスは再三訪れた。しかし真ん中から攻め入る形になるので、斜めから切れ込む形よりゴールへの視界は開けにくい。その攻撃のアクションには強引な印象がついて回った。

 立ち上がりに得たPKだけで、欧州チャンピオンが誕生してしまうのか。リバプールに追加点が入ったのは、決勝戦の権威を心配し始めた矢先だった。87分、右CKにセンターバックのフィルジル・ファン・ダイクがゴール前で絡んだそのこぼれ球だった。交代で入ったディボック・オリギが左足シュートを突き刺し、ダメ押しゴールとした。

 来シーズンのCLの決勝はイスタンブール。リバプールにとっては忘れることができない場所だ。そこにディフェンディングチャンピオンとして2連覇をかけて登場することができるだろうか。

 繰り返すが、リバプールは受けて立つと危ない。手ぐすねを引いて待ち構える強敵は少なくない。チャンピオンになっても挑戦者のキャラを忘れずに、前から積極的に圧力をかけるサッカーを実践してほしいものである。

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