CL大逆転劇総括。アヤックスになくトッテナムにあった「底力」の正体 (3ページ目)

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倉敷 飛車・角に加えて金・銀も持っていかれそうですが、すでにヘーレーンフェーンから優秀な若手センターバックであるキク・ピーリーを獲得し、同じポジションのアルゼンチン選手の補強も決まりました。今季のような躍進は無理だとしてもお金もできましたから補強もできる。極端に力が落ちることはないと思います。テン・ハフさえチームに残れば、それほど心配しないですむと思います。

小澤 そもそもアヤックスは、国内でプレーする有望な若手選手にそれなりのお金を使って補強していますしね。

倉敷 そのとおりです。かつてはPSVの方がお金持ちだったのですが、今は逆転しています。その国のリーグで一番のブランドでいることには大きな意味がありますね。フロント陣も今シーズンの成績に浮かれることはないでしょう。

 抜け目なく放出&獲得作業は進むはずですが、唯一の不安は、GKのアンドレ・オナナが引き抜かれた場合の代役探しです。テン・ハフさえ残ってくれればチームの屋台骨が揺らぐことはありませんが、オランダ国内には彼に代わるGKが見当たらないので、そこは弱点になってしまう可能性があります。もしもの場合はかなりのお金を使わざるを得ないでしょう。

中山 意外な盲点ですね。ベテランのフンテラールは来シーズンもやれそうですか?

倉敷 はい。僕は今シーズンのアヤックスのCL躍進の陰にはフンテラールの存在が大きかったと見ています。彼はCLで目立つ活躍はしていませんが、CL前後の国内リーグ戦で必ずといっていいほどゴールを決めていた。つまり、彼が国内リーグ制覇の原動力となることですべての選手の負担を軽くしていたことが大きなポイントでした。アヤックスが国内二冠を達成できた要因もまた彼の活躍にあるのですから、もっと称賛されるべき選手だと思います。

中山 いろいろな要素が重なって、アヤックスの今回の躍進があったんですね。近年は常連のビッグクラブだけで競い合っている傾向が強まっているCLですが、とにかくアヤックスのおかげで「お金がすべてを決めるわけではない」という見方が再び脚光を浴びることにもなったので、サッカー界にとってもよかったと個人的には思っています。

倉敷 そうですね。来年の新しいアヤックスにも期待したいと思います。

 次回は、めでたくファイナリストとなった2チーム、リバプールとトッテナムについて掘り下げてみたいと思います。

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