伊東純也はゲンクでヒーローになった。来季は「CLでバルサとやりたい」 (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

「試合前から、相手が寄ってくるのでお互いにサイドチェンジをしよう、と話をしていた」

 左右に張るトロサールと伊東に相手が警戒して寄ってくるため、ゲンクの中盤にはスペースが生まれる。サンデル・ベルゲ、ブライアン・ハイネン、ルスラン・マリノフスキーらゲンクのMFは、こうして中盤での自由を享受した。

 アントワープ相手に4-0と快勝したのち、選手たちはゴール裏のサポーターと万歳三唱を繰り返して喜びを分かち合った。サポーターが伊東の名前を叫び、チームメイトも「ゴー! ゴー!」と、伊東が前に出ることを促した。彼の音頭で、二度、三度、四度と、みんなが万歳を繰り返した。伊東はゲンクのヒーローになった。

 だがその後、伊東の調子が落ちた。3月30日のアンデルレヒト戦で痛めた腰を、5月7日の練習で再び痛めてしまったのだ。

 5月12日に行なわれたクラブ・ブルージュとの首位攻防戦では、伊東はアップの時から「恐る恐る」という雰囲気だった。試合が始まっても、伊東は思い切ったスプリントすらできず、活躍できぬまま84分でベンチに下がった。試合は3-2でクラブ・ブルージュが勝ち、ゲンクに勝ち点3差まで迫った。

 5月16日のアンデルレヒト戦では、伊東はやや持ち直した。11分には、中盤に引いてボールを受けると、ひとり交わしてターンしてトロサールに縦パスをつけた。そこからボールは右に展開され、最後はハイネンが詰めてゴール。試合は1-1で終わったものの、クラブ・ブルージュがスタンダール・リエージュに負けたことにより、ゲンクの優勝が決まった。

「プロになってから(優勝は)初めて。大学でもなかったので、実感が湧いてないです」。優勝を決めた直後、伊東はそう言って笑った。

 ゲンクを率いるフィリップ・クレマン監督からは、「1対1になったら常に仕掛けろ」と言われているのだという。

「それが自分の得意なプレーなので、そういう部分を評価してくれていると思います」(伊東)

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る