アヤックスの先輩と後輩が激突するCL準決勝。欧州通の3人が展望した (3ページ目)
倉敷 アヤックスがチャンピオンズリーグのベスト4に勝ち上がったのは1996-97シーズン以来、実に22年ぶりのことです。ずいぶん待たされましたが、日本でも再びアヤックスファンが増えている様でうれしいです。ネット上では90年代のアヤックスを知る人たちが当時との比較をしていますが、若い世代には新鮮でしょうね。
中山 あの頃は、セリエAが圧倒的に人気を博していましたが、海外サッカー通でオランダ代表やアヤックスを好む人が多かったですよね。
倉敷 あの時代は優勝、準優勝、ベスト4と、3年連続でチャンピオンズリーグの優勝争いをしていましたが、最後はボスマン裁定の煽りをモロにうけて、育て上げた優秀な選手のほとんどを放出せざるを得なくなりました。そして、ひとつの時代にピリオドを打ったわけです。
しかし、長い時間をかけて財政を立て直し、現在はドゥシャン・タディッチ、ネレス、タグリアフィコなど、チームコンセプトに合う選手を補強できるようになり、それが現在の育成に値段の高い選手をプラスするというチーム構成のコンセプトになっています。
トップカテゴリーへの扉は常に開かれています。下部組織で育った選手は10代のうちからトップチームに上げ、テクニックだけではなく、フィジカルでも引けを取らない選手として成長させ、その選手を売り、新しい選手をトップチームに昇格させることを繰り返します。現在のチームに対し「桜の散り際が見たい」と応援してくれるファンの方も多いと思うのですが、実はもう次の花芽も膨らみかけているのがアヤックスなんです。
中山 準決勝のスパーズ戦が楽しみですね。
倉敷 どうなると予想しますか?
中山 勢いも含めて、アヤックスがファイナリストになる可能性は十分にあるでしょうね。ただ、ひとつこれまでと状況が違うのは、相手がレアル・マドリーやユベントスというビッグクラブではないという点です。アヤックスが完全なチャレンジャーとは言えない構図の試合に対して、アヤックスがこれまでと同じような戦い方をできるのか、という部分が見所のひとつになるのではないでしょうか。
ただ、スパーズはソン・フンミンが次戦出場停止で、負傷中のハリー・ケインが間に合いそうもない状況を考えると、前線の駒のやりくりがとても難しい。現状からすると、本来ウイングのルーカス・モウラしかいないのかもしれません。
小澤 個人的にはアヤックス有利と見ています。一人ひとりの選手の質はスパーズが若干有利だとは思いますが、グループ、チームとしての連携、成熟度、戦術はアヤックスの方が上です。レアル・マドリーとユベントスを倒してここまでたどり着いた今のアヤックスには勢い任せの部分が全くありませんし、逆にスパーズはハリー・ケインの負傷やそもそも選手層が薄い今季のチーム編成からして相手がアヤックスといっても全く楽観視できません。
倉敷 スパーズのファンは、アヤックスが相手なら勝てると思っているのではないでしょうか? もし、シティ戦のように追い込まれた感覚がない状態のスパーズとアウェーでの第1戦を戦えるなら、それはアヤックスにとって良いことのように思えます。監督や選手はそう思わなくともスタジアムのサポーターはどう反応するでしょうか?
追い込まれた状態でホームゲームを迎えるならスパーズのサポーターたちはものすごいプレッシャーをかけてくるはずです。アヤックスの選手たちもそういった雰囲気に慣れているはずですが、やはりティーンエージャーが多いので、影響は受けるでしょうね。
ソン・フンミンもいない、ファンも追い込まれてはいない雰囲気のなかで、アヤックスはどう戦うか? 監督のメンタルコントロールが注目されます。
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