さらにタフになった植田直通。心の支えは鹿島の先輩・岩政の教え (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

 今季の植田を語るうえで、2月10日のクラブ・ブルージュ戦はどうしても避けて通ることができない。右ウイングバックとして出場した植田とマッチアップしたのは、俊敏な動きでサイドアタックを得意とするFWクレピン・ディアタだった。そのスピードに植田は手を焼き、失点シーンでもディアタの突破に対処しきれなかった。

「(クラブ・ブルージュ戦で)いきなり『ウイングバックをやれ』と言われましたが、この世界では『やれ』と言われればやるのが役目。そこでいいパフォーマンスができなかったのは、僕もわかっている。

 そこから、なかなか試合に出ることができませんでしたが、それでも僕はクサらずにやった。Jリーグの時にもそういう時期があったが、続けてやってきたという自負はあります。だから、今までどおりにやってきて、前回チャンスをもらって結果を出した。

 練習で監督から『今週出るぞ』と言われて、『これはチャンスだな』と思った。ずっとチームが勝っていなかったので、自分がチームを勝たせるつもりで強い気持ちでいった。それが結果に表われたと思います。これからも試合に出ている、出ていないに関係なく、続けていろいろとやっていきたいです」

 Jリーグの時、試合に出られない時期があったけれど、クサらずにやってきた――。

 ベフェレン戦後の植田の言葉を反芻しながら思い出したのは、鹿島アントラーズ時代のエピソードだった。プロ1年目の2013年、鹿島のCBには岩政大樹がいた。そのシーズンの後半戦、岩政が試合に出られなくなった時期があり、植田は紅白戦のサブ組でCBを組んだ。

岩政の教えは、こうだった。

「自分たちにとって、紅白戦が試合だ。そこで本当にやれなければ、試合でもやれない」

 シーズン前半はレギュラーだった岩政が、サブになってもクサらず、真剣に紅白戦に挑んでいたからこそ、新人の植田にはその言葉はなおさら響いたのだろう。

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