ゲーマー争奪戦も? サッカーの名門クラブが「eスポーツ」にご執心 (2ページ目)
ここまでくると、もはやeスポーツは単なる娯楽というより、ひとつの競技としてとらえるほうが自然だろう。では、なぜそこまでしてサッカーはeスポーツにエネルギーを注ぐのか? その理由は、ヨーロッパの一流サッカークラブがひと足先に推進してきたeスポーツ事業の例を見てみるとわかりやすい。
たとえば、フランス随一のビッグクラブとして世界的に知られるパリ・サンジェルマン(PSG)は、2016年10月にeスポーツ事業を推進する新部署「PSG eSports」を立ち上げ、『FIFA』シリーズのプレーヤー2人と契約。その他、サッカーゲーム以外にも、世界で最大の人気を誇るとされるアメリカのライアットゲームズ社のPCゲーム『League of Legends』のチームを結成し、ヨーロッパの大会(European Challenger Series)に挑戦するなど、本腰を入れてeスポーツに取り組んでいる(現在は『League of Legends』以外の6競技のチームが活動中)。
もちろん、彼らがeスポーツ部門を立ち上げた最大の理由は、PSGブランドを世界に広め、バルセロナ、レアル・マドリー、マンチェスター・ユナイテッドといった世界トップのビッグクラブに追いつくためである。本業のサッカー以外のアプローチによって認知度を高め、とりわけゲームに夢中になっている若者を中心としたファン層を獲得したいという狙いである。
チャンピオンズリーグでの活躍、あるいは夏のアメリカツアーやアジアツアーなども、フランス以外の各地域のファン獲得には重要な要素ではある。しかし、グローバルに急拡大するeスポーツ市場への参入には速効性という大きなメリットがある。しかも、サッカーゲーム以外のチームを持てば、たとえば『League of Legends』の国際大会でPSGのユニフォームを着たプレーヤーが戦っている姿を見せることにより、まだ特定のサッカークラブを応援していないサッカーファン以外の層を取り込める可能性もある。
一方、eスポーツプレーヤーにとっても「PSG eSports」に所属するメリットはある。それまでは自分だけの判断に頼って腕を磨くことに励んでいた彼らは、フィジカルや食事面で的確なアドバイスを受けながら、一流のプロサッカークラブが与えてくれる環境でトレーニングを積むことができ、より高いレベルに成長することができる。
実際、「PSG eSports」が2017年からPC製品などで世界的に知られる台湾の「ASUS(エイスース)」社とスポンサー契約を結んだことで、所属プレーヤーたちはゲーミングPC、ラップトップ、モニタといったASUS社の製品を使って、ベルリンのゲーミングハウスでトレーニングを行なっている。
また、クラブから安定した報酬を受け取ることで、プロのeスポーツプレーヤーとして社会的に認知されることも、彼らにとっては大きな魅力となる。
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