欧州CLマニアック鼎談。達人たちが注目したのは物議をかもしたVAR (3ページ目)

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倉敷 VARを使っても粋なジャッジって可能なはずなんですけどね。試合に話を戻すと、アヤックスも前半から臆することなく押し込んでいくプレーができましたが、マドリーは無失点で前半を終えることに成功した。強豪との連戦、非常にタフな日程の中で持ち前の集中力の高さと試合運びのうまさを見せつけたるあたりは、さすがでした。

小澤 前半は、アヤックスがかなりハイプレスで来ましたね。最近の戦術的トレンドで言うと、4-3-3のシステムを用いて相手の4バックに対して3トップでハイプレスをはめに行くよりも、今回のアヤックスがやったように4−2−3−1でCBからの配給をスイッチにプレスをかけるチームが多くなっています。

 それだけ、どのチームもビルドアップにおけるプレスの耐久性が上がり、回避するバリエーションが増えたということだと思いますが、アヤックスはまずタディッチとファン・デ・ベークがセルヒオ・ラモスとカゼミーロをつかまえ、ナチョにボールを持たせるよう仕向けながら、ダヴィド・ネレスとハキム・ジイェクがダニエル・カルバハルとレギロンの両サイドバックにパスが入るタイミング、サイドで奪いどころを作っていました。

 通常であればマドリーはカルバハルとレギロンが上がったスペースにルカ・モドリッチ、トニ・クロースが降りてビルドアップをしていくわけですが、アヤックスにそこを狙われているわけですから、とくに前半はボール保持しながらかなり苦しい局面、時間が続きました。あんなにパスの出しどころがないマドリーを見たことがなかったので、前半のアヤックスがすばらしかったと言うしかないと思います。

 実際、前半のマドリーは14分のヴィニシウスのドリブル突破からのシュートくらいしかチャンスはなかったですから。センターバックのラファエル・ヴァランがインフルエンザで欠場して、直前にナチョに変更になるなどエクスキューズはあるにせよ、マドリーが何もできなかった前半だったと言っていいと思います。

中山 試合前の流れからすると、マドリーは国内リーグでアトレティコ・マドリードとのダービーで完勝するなど、5連勝でこの試合に臨みました。もちろん、アヤックスが好チームであることは彼らも理解していたと思いますが、連勝中というポジティブな要素が妙な自信になって油断を生んでしまったという気もします。前半を見たとき、猛然と向かってくるアヤックスに面食らい、それを耐えしのぐだけで前半を終えてしまったという印象です。

小澤 それは、スタメンにルーカス・バスケスではなくガレス・ベイルを起用したという部分にも表れていましたよね。あれだけアヤックスがハードワークして、ハイプレスをしかけてくることを想定できていたら、おそらくルーカス・バスケスをスタメン起用し、後半に疲れてきたところでベイルを投入するというのが常套手段ですし。

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