恩讐を越えて。スペイン代表モラタが古巣・アトレティコを選んだ理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

 スペイン代表のロシアW杯のメンバーから外れたのも、戦術的相性と無関係ではなかった。「ティキタカ」と言われたパサータイプが多いチームで、「機能しない」と判断された。特色が出るタイプのストライカーなのだ。

 その点、闘将ディエゴ・シメオネ監督が率いるアトレティコは、ポゼッションを重視せず、効率的なカウンター攻撃を掲げている。シメオネはモラタのポテンシャルを高く評価し、過去に2度、入団を打診したことがある。手術をして戦線離脱中のスペイン代表FWジエゴ・コスタ(2月下旬には復帰予定)に代わる存在として、理想的なストライカーと言えるだろう。

「モラタはアトレティコの選手にふさわしいか?」

 スペインの大手スポーツ紙、マルカはインターネットでアンケートを行なったが、7割近いファンが「イエス」と答えている。

 サッリのチェルシーで不遇を感じていたモラタも、移籍先として名前の挙がったどのクラブよりアトレティコを望んでいたという。交渉では900万ユーロ(約11億円)という高年俸がネックになったが、モラタ自身が給料ダウンでもアトレティコを希望。この決着は、相思相愛の必然だった。

 モラタがアトレティコを選んだもうひとつの根源的理由は、少年時代を過ごした古巣だからだ。

 モラタはアトレティコのカデテ(14、15歳のチーム)に属していた。週末には、トップチームのボールボーイをするのが楽しみだったという。しかしポジションを争っていたボルハ・バストン(アラベス)に敗れる形で、退団を余儀なくされることになった。当時の育成部長の判断だったという。

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