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マラドーナが神だったように、
いまメッシを神と仰ぎたいアルゼンチン (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 それでも、メッシがボールを前に運ぶことで、アルゼンチンは優勢に立った。19分にはセルヒオ・アグエロがペナルティエリアでボールをコントロールし、強引にボールをネットに叩き込んでいる。

 この一発で、試合は一気にアルゼンチンペースになるかと思われた。ところが、迫力のあるハイボール戦術で押し込んでくるアイスランドに、守備陣がたじろぐ。そして23分に同点弾を叩き込まれ、アルゼンチンは窮地に立たされた。

 再びメッシは勝利の責任を肩に背負うことになり、さらに力みを感じさせるようになる。バルセロナでプレーしているときのようなコンビネーションは影を潜め、孤立無援に近かった。

 54分にエデル・バネガが投入されたことで、ボールが出入りするポイントは増えた。おかげでメッシは、ようやく"呼吸できる"ようになる。疲れからか出足が鈍くなってきたアイスランドの選手を翻弄し、ジワジワと追い詰めた。

 そして62分。左サイドでフリーになったメッシがディフェンスの裏に絶妙なクロスを落とし込み、それを受けたマキシミリアーノ・メサが倒され、PKの笛が吹かれた。キッカーは、メッシだった。神が降り立つ瞬間だ。

 しかしキックのコースは思いのほか甘く、GKのファインセーブに防がれた。メッシはバルサでもPK成功率が著しく低い。実はPKは得意ではないのである。

 この後もアルゼンチンは、8割近いボール支配率で圧倒的に攻めている。その中心にいたのはやはりメッシだった。しかし、焦りからか、攻め急いでしまう。アイスランドが強固に築いた中央の砦を頑なに攻め続け、完全にノッキング。ディフェンスの波間に突っ込み、飛沫だけが上がるような状態だ。

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