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アルゼンチン代表がW杯前に
トホホ状態。イスラエル戦中止で大騒ぎ  (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 1986年の記憶があるアルゼンチンも異存はなかった。イスラエルはアルゼンチンサッカー協会に200万ドル(約2億2000万円)を支払うという。おまけにリオネル・メッシが1分プレーするごとに5万ドル(約550万円)がプラスされるというリッチなオプション付きだ。アルゼンチンはふたつ返事で承諾した。

 試合は当初、イスラエル北部のハイファという町で行なわれるはずだった。これがそのままだったら、何の騒動も起こらなかったかもしれない。

 だが、イスラエルの政治家たちはこの試合を、政治的に最大限、有効活用しようと画策した。アルゼンチン代表が、メッシをはじめとするスター選手たちが、イスラエルに来ることなどそう滅多にあることではない。イスラエルのスポーツ相は開催地を、ハイファからエルサレムに変えることにした。3万5000枚のチケットは20分で売り切れ、6000枚のチケットは病気の子供や身寄りのないお年寄り、傷痍軍人などに配られた。

 すると、これを知ったパレスチナサッカー連盟が激怒した。

 エルサレムは非常にデリケートな街だ。キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の聖地であり、イスラエルとパレスチナ双方が自国の首都であると主張している。この5月にはトランプ大統領がアメリカ大使館をエルサレムに移し、この問題は一気に熱くなっている。アルゼンチンはこのことを考慮すべきだった。今年はイスラエル建国70周年で、アルゼンチンとの試合はそれを祝うような形となってしまったのだ。

 パレスチナサッカー連盟は、まず70人の子供たちにメッシ宛てに手紙を書かせた。アルゼンチンがプレーする予定のエルサレムのスタジアムは、50年前まで、もともと彼らの親や祖父らが住んでいた土地だったと訴えさせたのだ。

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