ロシアに行きたい久保裕也、ゲントの「応援PK」で不振脱出なるか

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

 4月1日、ゲントがアンデルレヒト相手に1-0でリードしていた85分、MFビルヘル・フェルストラーテがペナルティエリアのなかで倒されてPKを獲得した。すかさずボールをしっかり掴み、ペナルティスポットに向かったのは、この日スタメンから外れて83分にピッチに立ったばかりの久保裕也だった。

PKで2点目を決めてガッツポーズの久保裕也PKで2点目を決めてガッツポーズの久保裕也「自分が蹴ってもオッケーか?」

 そう久保がベンチに向かって聞くと、イベス・ファンデルハーゲ監督は「オッケー!」のシグナルを送ってきた。

 以前、ゲントがすでに勝利をほぼ手中にしていた試合でPKを得たとき、久保たちが「ノーゴールの(ロマン・)ヤレムチュクに蹴らせてあげよう」と主張したが、ファーストキッカーのFWサミュエル・カルーが譲らなかったことがあった。

 そんなことがあったチームとは思えぬほど、今回、久保がPKを蹴ることに異議を唱えるチームメイトはいなかった。

 久保が蹴ったPKそのものは、コースが甘かった。相手GKがキャッチせず、前に弾いたのが不思議なぐらいだった。だが、そのリバウンドを久保が詰めて、右足を振り切ってゴールネットを揺らした。2-0。残り時間と試合の流れから、ゲントにとってはセーフティーリードだ。ゲント応援席に向かって走った久保を中心に、チームメイトの喜びの輪が広がった。

「運がよかったです。蹴らせてくれた監督とチームメイトに感謝したいです。(相手GKに)完全に読まれてましたね。PKは練習してるんですけど、なかなか。でも、これで乗っていけたらいいかなと思います」

 このPKで乗っていきたい――それが、久保の切なる思いである。今季31試合で8ゴールという数字は、昨季半シーズンだけで11ゴールを叩き出したことを思うと、もの足りない。

 今から1年前、当時ゲントを率いていたハイン・ファンハーゼブルック監督(現アンデルレヒト)は、「もし裕也が冬の移籍市場ではなく、夏からゲントにいてくれたらチームは優勝していた」とうなっていた。

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