プーチンはロシアW杯を「さっさと終わらせてしまおう」と考えている (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 試合の運営もすばらしかった。僕が泊まったホテルで向かいの部屋を使っていたのは、当時のFIFA会長で、プーチンのお友だちでもあるゼップ・ブラッターだった。その2カ月後、ロシアは欧州選手権で準決勝に進出し、モスクワの通りは1945年以来、最多となる歓喜の群衆で埋め尽くされた。

 数週間後、ロシアはジョージア(グルジア)に侵攻した。米ロ関係は雲行きが怪しくなった。

 しかし2009年にアメリカでバラク・オバマ大統領が就任し、対ロシア関係の「リセット」を宣言。3月にはヒラリー・クリントン米国務長官(当時)がロシアの外相に、米ロ関係の改善へ向けた努力の象徴として、英語とロシア語の両方で「リセット」と書かれた大きな赤いボタンを贈った(アメリカ側はこのとき書いたロシア語の「peregruzka」が「リセット」の意味だと思い込んでいたが、実は不具合を引き起こしかねない「過負荷」という言葉だった)。

 こうした流れのなか、プーチンは2018年のワールドカップを、中国が2008年に開いた北京オリンピックのロシア版にできると思っていたはずだ。裕福で、自信に満ちた現代の国家として世界にデビューするパーティーである。

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