グリーズマンの「漫画みたいなシュート」でアトレティコは生き返るか (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Getty Images

 安定しない守備、つながらないパス、連動性のない淡白な攻撃、ハンドで取り消されたアウグスト・フェルナンデスのゴールに象徴される不運......すべての要因が少しずつ、今季のアトレティコの歯車を狂わせていた。リーガではなんとか4位をキープしているが、CLでは格下のグラバグ・アグダム(アゼルバイジャン)にアウェー、ホームとも引き分けたのが痛かった。

 アトレティコの不振が厄介なのは、明らかな修正が必要なほど悪いわけでないことだ。力のあるチームだからこそ、ごまかしながら戦い続け、少しずつベストな状態から遠ざかっていく負のスパイラルに飲み込まれてしまった。その負のスパイラルに一番に飲み込まれていたのが、ゴールに見放されていたエース、グリーズマンだ。期待はプレッシャーに、愛情は憎悪へと変わった。その結果、生み出されていたのはゴールではなく、焦りだった。

 だがこのローマ戦、悩めるエースが決めた一発は、そんな悪い流れをすべて断ち切る力のあるものだった。試合終了間際にもグリーズマンのアシストから途中交代のケビン・ガメイロがGKをかわして角度のないところからゴールを決めた。リーガエスパニョーラのセビージャ戦以来、公式戦11試合ぶりの複数得点で勝利を手にしたチームは、決勝トーナメント進出へ一縷(いちる)の望みを残した。

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