プレミア初昇格で3位。選手がファンと一緒に食堂の行列に並ぶクラブ (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

「カナルサイドがあるおかげで、選手たちは正直になれる。週末の試合に負けても、月曜の朝にはこのクラブでファンと顔を合わせなくてはならない。古くからのファンのなかには、厳しいことを言う人もいる。その一方で選手たちは、ここでスヌーカーやローンボウリングを楽しむ人たちの顔を覚える。選手のほうからサポーターに『やあ、どうも』などと声をかけている」

 そうはいっても、ここでは選手のほうがいくらか優遇されている。僕がフルーツのデザートを注文しようとしたら、食堂の女性スタッフに「ごめんなさい、これは選手向けなの」と言われた。

 しかし、こんなふうにファンと選手が交流することは、マンチェスター・ユナイテッドではありえない。カナルサイドの風景はプレミアリーグへ意外な昇格を果たしたクラブについてだけでなく、このクラブが本拠を置く町について多くのことを教えてくれる。

 カール・マルクスの友人であるフリードリッヒ・エンゲルスは、ハダースフィールドについて、こう書いている。「ランカシャーとヨークシャーの工場町では、群を抜いて美しい。その魅力的な位置と、近代的な建築のおかげだ」

 1908年にフットボールのクラブが設立されたとき、ハダースフィールドは繊維業で栄えていた。薄茶色の砂岩を使った工場主の邸宅は、当時の繁栄ぶりを今に伝えている。

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